学校の階段

2007/03/23 角川映画試写室
学校の「怪談」に非ず。学校の「階段」である。
アイデアは面白いんだけどね……。by K. Hattori

 学校内をいかに早く移動するかを競う「校内ラリー」。その練習のため、学校の階段を猛スピードで上り下りし、廊下を全速力で駆け回っているのが、名門天栗浜高校の鼻つまみ「階段部」だ。父親の仕事の都合で天栗浜高に転校してきた神庭里美は、バスケ部に入るつもりが、なぜか階段部に入部してしまうことになる。だがそんな彼女の前に立ちふさがるのは、階段部と生徒会との確執。学校非公認の階段部を解散させようと、あの手この手で妨害してくる生徒会長・中村ちづる。彼女は階段部部長の刈谷健吾と、過去に何かあるらしいのだが……。

 黒川芽以主演の学園ドラマだが、映画の印象は全体に中途半端でぼんやりとしたものに終わっている。そもそも物語の中心になる「階段部」というのがよくわからない。学校内でタイムトライアルというアイデアは面白いのだが、それだけでは「学校の廊下を走って、それで何か?」という気がしてしまうのだ。これを競技にするなら、もっと別の設定が必要ではないのか。例えば、じつはいろいろな高校に公認非公認の階段部がたくさんあって、それが定期的に対抗戦をしているなど、「競技種目」としての深みが欲しかった。たった数人のメンバーで学校内を走り回っているだけじゃ、単に廊下を走るのが好きなだけの馬鹿ではないか。

 映画なんだから、物語に荒唐無稽な嘘があってもいい。でもその嘘を、映画を観ている間だけは「本当のこと」だと信じさせて欲しいのだ。この映画はそれを放棄している。それどころか最初から「これは嘘ですよ」と、設定の虚偽性をあばくような演出をしている。やたらと乙女チックな、ヒロインの叔母などがその一例だ。ヒロインが突然歌い出すという、ミュージカルかオペレッタのような場面もある。話になんの関係もなく、突然三輪ひとみが現れる。ストーリー自体は単純だし、学校内の落ちこぼれ集団と、エリート生徒会の対立という対立軸も明確。これは普通に映画化すれば、それなりに面白くなる素材なのだ。ところがこの映画はそれを避ける。話がスムーズに流れるのを阻み、むしろギクシャクした時間を作り出す。ところがこうした演出にどんな意図があるのか、僕にはさっぱり理解できないのだ。

 原作は人気の同名ジュニアノベルだそうで、それを監督の佐々木浩久が脚色している。学校の廊下を十代の少女たちが走り回るという「絵」の面白さは多少あるにせよ、それ以外にこの映画の面白さはどこにあるのか。主演の黒川芽以も魅力が十分に発揮されているとは思えないし、部長役の松尾俊伸、ライバルの生徒会長を演じた小阪由佳以下、他の出演者たちには作り物めいたキャラクターの仮面以外に何も見いだすことができないのではないか。ベテランの森本レオですら、この映画の中では本来の持ち味を発揮できていない。こんな映画は、もっと普通に作ってほしいのです。なぜそれができないのか……。

4月28日公開予定 シネマート六本木
配給:アンプラグド
2007年|1時間15分|日本|カラー|ビスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://kaidan.gyao.jp/
DVD:学校の階段
原作:学校の階段
主題歌CD:スタートライン(黒川芽以)
エンディング曲「君は君だから」収録CD:愛アイちゃんぷる〜(安次嶺奈菜子)
関連DVD:佐々木浩久監督
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