マイアミ・バイス

2006/08/14 UIP試写室
同名テレビシリーズをマイケル・マンが映画化したアクション作。
恋愛エピソードはちょっと苦しい。by K. Hattori

 1980年代に一世を風靡した人気刑事ドラマの映画版。テレビ版で製作総指揮を担当したマイケル・マン監督が、今回の映画の監督・製作・脚本を担当している。したがって「テレビと全然違うぞ!」という批判は、あらかじめ封じ込まれてしまう。これはテレビ版「マイアミ・バイス」の作り手が、そのエッセンスを生かして作り上げた21世紀の『マイアミ・バイス』なのだ。物語の舞台は現代のフロリダ。20年前のテレビ版からは登場人物の名前をそのまま引用しているが、その他の人物設定なども含めて、今回はまったくのオリジナルになっている。(テレビ版をよく見ていないので細かいことはよくわからないけど、たぶんオリジナルだと思う。)

 麻薬取引にまつわる潜入捜査ものだが、映画を最後まで観ても、犯罪の黒真は捕まらず、すべての謎が解けるわけでなく、めでたしめでたしの一件落着にならない。一応は表面的な物語に決着が付き、悪人は滅んで主人公たちは勝利するのだが、本質的な部分はなにも解決しないまま取り残されてしまう。こうした幕切れを「続編のためだろう」と勘繰る人もいそうだが、こうした宙ぶらりんの状態で物語を終わらせてしまうのは、「マイアミ・バイス」がテレビ版でもしばしば行っていたものらしい。主人公ふたりがどんなに活躍しても、この世の中のすべての問題が解決して丸く納まるわけではない。捜査の中で多くの人が傷つき、苦しみ、血を流しても、なお問題は解決しないまま放置される。その中で主人公たちは、終わりのない戦いを続けるしかないのだ。ドンパチ満載のエンターテインメントではあるが、その世界観はシニカルでヘヴィなものなのだ。

 今回の映画では白人刑事ソニー・クロケット役にコリン・ファレル、黒人刑事リカルド・タブス役にジェイミー・フォックスという中堅どころの配役。麻薬組織の女性幹部イザベラ役に、コン・リーを配しているのが見どころのひとつだが、他のラテン系メンバーの中にひとり中国系の彼女を置いたのはアイデア賞。これによって彼女の複雑な生い立ちと過酷な経歴を誰もが想像できるし、彼女の気持ちが組織から離れていくことも自然に見えてくる。中南米系の組織の中で、たったひとり彼女が働いているのがそもそも不自然なわけで、それがソニーとの接触によって自然な状態に戻ろうとするわけだ。コン・リー自身の演技力や役作りの努力もあるだろうが、この役はこの手の映画には珍しく、都合のいい悲劇のヒロインにならず、主体性を持った自立したヒロイン像になっていたと思う。

 ただしそれでも、コン・リーとコリン・ファレルの年齢差は気になる。彼女は今でも十分きれいだけれど、実年齢は40歳を過ぎている。30歳のコリン・ファレルとは、うまく釣り合わないのだ。かといってこのヒロインをあまり若くするのも不自然なので、これはたぶん、ソニー役がもっと年上になるべきなのだろう。

(原題:Miami Vice)

9月2日公開予定 日劇1ほか全国東宝洋画系
配給:UIP
2006年|2時間12分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SDDS、SR
関連ホームページ:http://www.miami-vice.jp/
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