M:i:III

2006/07/01 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン2)
シリーズ3作目はこれまでで最高のデキだった!
チームプレイ重視の脚本がいい。by K. Hattori

 トム・クルーズ主演の人気シリーズ第3弾。1作目は大ベテランのブライア・デ・パルマ、2作目に香港ノワールの巨匠ジョン・ウーを招いた彼が、3作目の監督を依頼したのはテレビシリーズ「エイリアス」や「LOST」のJ・J・エイブラムス。なんと彼はこれが劇場映画デビュー作だが、今回は脚本も書くなど大活躍。新人にここまで権限を与えるトム・クルーズの太っ腹ぶりには恐れ入るが、その期待に答えたエイブラムス監督の手腕にも驚いた。映画導入部にクライマックスシーンをちょい見せして観客を一気に引き込み、あとは最初から最後までアクションに次ぐアクション、見せ場に次ぐ見せ場の連続でまったく飽きさせない。フィリップ・シーモア・ホフマンのふてぶてしい悪役ぶりも最高。悪役が光ってこそ主人公が映えるという、サスペンス・アクション映画の見本になっている。

 今回の映画の面白さは、一言で言えばチームプレイの面白さ。主人公のイーサンが超人的な能力を発揮して不可能を可能にするのではなく、メンバーが力を合わせて目の前の難関を突破していくのだ。これは映画の最初から最後まで徹底している。主人公が仲間と離れて単独行動を取る終盤でも、彼には命をあずける頼もしい味方が付いている。こうした個人と個人の信頼感や絆があるからこそ、主人公たちはたったひとりの仲間を敵から救うために命を賭けるし、仲間の命を捨て駒にする裏切り者を許さないのだ。

 また今回の映画では、主人公の行動が個人的な動機と強く結びつけられている。彼が守るべきは、国家でもなければ、世界の平和でもない。彼が守りたい、救いたいと願っているのは、最初は自分の教え子だし、次は自分の妻が守るべき対象となる。こうした「個」による動機付けに対して、主人公たちを裏切る黒幕は「私は国益と民主主義のために働いている」と断言する。個を犠牲にして悪と結託することが、結果としてはアメリカのため、世界平和のため、正義のためになるのだという理論。こうしたパワーゲームの理論に、主人公は断固としてNO!なのだ。これは映画の作り手のメッセージでもあるだろう。大切なのは個人だ。個人と個人の親密なつながりだ。国家や主義のために、それらを踏みにじるのは悪だ。それがこの映画のメッセージとなっている。

 現在ケイティ・ホームズと婚約中のトム・クルーズだが、この映画は彼の「結婚宣言」のようにも見えてくる。主人公のイーサンは多忙な生活から一歩距離をおき、ごく普通の結婚生活を求めている。しかし仲間の多くはそれを「無理だ」と一蹴する。「2年で別れるぞ」と言う者もいれば、「結婚できないと思うけど、それがこの仕事のいいことろさ」と言う者もいる。実際この映画の中で、主人公の結婚生活は大きな危機に襲われる。でも主人公が最後まで諦めずに戦い続けられるのは、愛する妻がいればこそ。結婚は素晴らしい!というのが映画の結論のようだ。

(原題:Mission: Impossible III)

7月8日公開予定 日劇PLEX、有楽町スバル座ほか全国ロードショー
配給:UIP
2006年|2時間6分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|SDDS、DTS、Dolby Digital
関連ホームページ:http://www.mi-3.jp/
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