キャッチ ア ウェーブ

2006/03/24 ワーナー試写室
現役高校生が書いた話題のサーフィン小説を映画化。
高校生たちの一夏の体験を描く。by K. Hattori

 16歳の現役高校生・豊田和真のデビュー小説「キャッチ ア ウェーブ」を、テレビ版「ウォーターボーイズ」シリーズの演出家・高橋伸之監督が映画化した青春サーフィン映画。映画のシナリオは原作者が自ら脚色している。主演は子役出身の三浦春馬と、原作者のイメージキャストだったという竹中直人。主人公のガールフレンド役には、『シムソンズ』で好演した加藤ローサ。主題歌をDef Tech、音楽をDEPAPEPEが担当しているのも、原作者の意向なのだという。

 高校生の原作者が、自分と同年配の高校生の主人公にした小説を書き、映画化に際しても脚本を自ら書いて、キャスティングや音楽にも強い意向を示し、それが実現した……。そんな映画のバックストーリーが、どこまで本当なのかどうかはわからない。これは「高校生のために高校生が作った映画」という製作側のアピールだろう。この数年、芥川賞に代表される文学賞で若い受賞者が続出するなどして十代の小説家が次々誕生し、それをきっかけにしてこれまで小説を読まなかった中高生たちが小説を読むようになったとも言われている。「作り手の若さ」はそれだけで、作品の内容以上に作者と同世代の観客にアピールするのだ。たぶんこの映画も、そんな「作者と同世代」の観客にアピールしようとしているのだろう。

 映画としてはさほど新鮮味もないし、むしろアリキタリな表現が目立つ。高校1年生の同級生トリオ。一夏の思い出作り。モテたいがゆえのサーファー志願。意味不明の秘密特訓。偶然であった美少女との淡い恋。ライバル出現。少年たちを暖かい目で見守る大人たち。能天気な中年オヤジの抱えた心の傷。ライバルとの決闘。命懸けの勝負の先に得た人生の教訓。悲しい別れ。その他もろもろ……。これまでに作られた数々の青春ドラマ、青春小説、青春映画から、エピソードを抜き出して継ぎ接ぎしたような印象だ。僕はここにまったく新しさを感じない。ここからは今この時を生きている高校生のリアリティが、まったく伝わってこない。これでは昭和50年代の青春ドラマを不格好になぞったような、ぎこちないパスティーシュではないか。

 映画は湘南を舞台にしているのだが、その海がまるでハワイか沖縄のように真っ青になっているのが不自然すぎる。これは撮影した映像の色調を変えて、こうした色合いに仕上げたのだろう。人工着色された青い海だ。この不自然な青さが、この映画のすべてを象徴している。現実がパッとしないなら、映画の中で無理にでも色を着ければいい。自然さよりも、見栄え重視。その結果、この映画はすべてが厚化粧になっている。素朴な素材で真向勝負すればいいものを、表面を取り繕ってゴテゴテとエピソードを塗り重ねている滑稽さ。

 物語からは直球勝負のサインが出ているのに、演出側が変化球勝負に出て失敗した映画のように思える。もう少し物語やキャラクターを信用すべし!

4月29日公開予定 シネマGAGA!、テアトル新宿、池袋シネマサンシャイン、梅田ブルクほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2006年|1時間56分|日本|カラー|ビスタサイズ|SR、SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.catch-a-wave.net/
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