男たちの大和

YAMATO

2005/11/22 東映第1試写室
日本版の『プライベート・ライアン』+『タイタニック』。
蒼井優と寺島しのぶがよかった。by K. Hattori

 第3回新田次郎文学賞を受賞した辺見じゅんのノンフィクション「男たちの大和」を、ベテランの佐藤純彌監督が映画化した戦史スペクタクル。実物大のセットとCGを組み合わせて、日本帝国海軍最大の戦艦だった大和の雄姿を再現してみせる。大和が東シナ海に沈没したのは1945年4月7日。今年はそれから60年だ。

 2005年4月6日、ひとりの女性が鹿児島県枕崎港を訪ね、翌日に大和沈没の海域まで連れて行ってくれる船を探し始める。彼女は大和の生存者、内田二等兵曹の娘だった。これを知った枕崎の老漁師・神尾は、自分の船で彼女を沈没地点まで送り届けることを約束した。じつは彼もまた大和生き残りのひとりであり、戦争中は内田二等兵曹とも面識があったのだ。4月7日に助手の少年を連れて船を出した神尾は、内田の娘に語りかけながら、今から60数年前の出来事を思い出していた……。

 伝説の船の沈没地点をかつてその船に乗っていた人間が訪れ、自分の体験を語るという構成はジェームズ・キャメロンの『タイタニック』と同じ。ある程度長い年月を語る映画では回想形式が便利だが、それにしてもこれは似すぎている。神尾老人を演じるのは仲代達矢で、彼は『月光の夏』という映画でも戦争体験を語る特攻隊生き残りの老人を演じていた。今回の映画は少なくとも現代の場面において、あまり新鮮味のない映画になってしまっていると思う。

 回想の中では当然大和沈没に至る激戦がクライマックスになるのだが、この残虐な戦闘シーンは『プライベート・ライアン』以降の映画だ。爆風で人間が吹き飛ばされ、飛行機からの銃撃で人間が血煙を上げて瞬時に細切れの肉塊に変貌する。傾く甲板から人が滑り落ちていくシーンは『タイタニック』にもあったが、この映画ではむしろ『パール・ハーバー』を連想させるはずだ。迫力はあるが、やはり新鮮味には欠けるかもしれない。

 出演俳優として大きくクレジットされているのは反町隆史と中村獅童。反町隆史の森脇二等兵曹はそれなりによかった。しかし中村獅童の内田二等兵曹は肩に力が入りすぎで、人物像が少し平板になってしまったのが残念。もう少し二枚目半の顔が見えると、キャラクターがぐっと観客に近づいただろうに。この映画は登場人物が多く、人物描写はどうしても一面的になりやすい。だからそこでは役作りした演技者の顔ではなく、各俳優が持つ普段の顔を見せた方が人物に深みが出たと思う。そういう点で、主役クラスの俳優よりも、脇の人物の方が印象的だ。長嶋一茂が演じる白淵大尉、山田純大の唐木二等兵曹、渡哲也の伊藤司令長官、奥田瑛二の有賀艦長、林隆三の草鹿参謀長などは、役柄にピタリははまっている。

 なにより映画を現代の観客に引きつけているのは、蒼井優や寺島しのぶなどの若手女優だ。彼女たちのエピソードによって、60年前の出来事は現代に引き寄せられる。

12月17日公開予定 丸の内TOEI1ほか全国東映系
配給:東映
2005年|2時間23分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.yamato-movie.jp/
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