蝋人形の館

2005/08/12 ワーナー試写室
往年のホラー『肉の蝋人形』のリメイクだが……。
これはむしろ『デビルズ・ゾーン』だ。by K. Hattori

 1933年に製作され、53年にもリメイクされた古典ホラー映画『肉の蝋人形』のリメイクだが、ストーリーや趣向は1979年のホラー映画『デビルズ・ゾーン』に近い。『デビルズ・ゾーン』は『悪魔のいけにえ』(74年)の亜流作品と言われてあまり評価が高くないようなのだが、僕は以前テレビで見て、生きた人間からデスマスクを取り窒息させる描写に震え上がった記憶がある。(最近起きた自殺サイト殺人で、犯人が被害者を窒息させて興奮したという記事を読んで『デビルズ・ゾーン』を思い出した。)たぶん『蝋人形の館』のスタッフも、『デビルズ・ゾーン』が大好きだったに違いない。

 フットボールの試合を観るため、途中でキャンプしながら試合会場に向った若者たちが、次々と殺人鬼に殺されていく……という『13日の金曜日』型ホラー映画。登場する6人の若者たちがいかにして殺され、誰が生き延びるかというのが、この手の映画を観るポイントだが、生き延びる人物は早々に見当がついてしまうので、あとは残り4人の死にっぷりがポイントになる。残念なのはそのうちひとりがあっけなく死んでしまうことで、どうせならこれもじっくり時間をかけてほしかった。

 映画で一番驚かされたのは、この手の映画では必ず無傷で生き延びるはずのヒロインが、生涯残るような肉体的な傷を負わされることだ。これは反則みたいなものだが、観客はこれがあることで、この映画の中ではこれまでのホラー映画のルールが通用しないことに戦慄する。ヒロインが傷つけられた瞬間、ホラー映画を観る上での前提がガラガラと崩れていくような衝撃を味わうことになる。実際にはその後このシーンに匹敵する何かが起きるわけではないが、このシーンは映画を観る人にとってトラウマとなることは間違いない。

 製作はジョエル・シルバーとロバート・ゼメキスの、ダークキャッスル・エンターテインメント。この会社は往年のホラー映画を現代の感覚でリメイクするのがひとつの柱になっているので、今回も『肉の蝋人形』なり『デビルズ・ゾーン』に目をつけたのだろう。70年代から80年代に量産されたツーリスト・ホラーやスプラッタ・ムービーが好きな人には、ストーリーの組み立てから演出まで、何から何まで懐かしさを味わえる映画だと思う。もちろんいきなりこの映画を観ても、十分面白いはずだ。

 監督は31歳の新人ジャウム・コレット=セラ。ミュージックビデオやCMを撮っていて本作に抜擢されたらしいのだが、異業種監督にありがちなトリッキーな映像テクニックなどをほとんど使わず、オーソドックスな演出に徹しているのは好感がもてる。派手さはないけれど堅実な映画作りだ。こうした形で映画界にデビューした方が、次の作品につながりやすいという戦略があるのかもしれない。これだけの映画が撮れるなら、次はどんな映画を撮らしても問題なさそうだもんね。

(原題:House of wax)

10月公開予定 新宿シネマミラノほか全国洋画系
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:レオ・エンタープライズ
2005年|1時間53分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|SR、SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.warnerbros.jp/
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