ARAHAN/アラハン

2005/08/05 UIP試写室
さえない真面目警官が突然世界の救世主に!
物語と語り口がちぐはぐな印象。by K. Hattori

 日本未公開の韓国映画『ダイ・バッド/死ぬか、もしくは悪(ワル)になるか』のリュ・スンワン監督が、『ダイ・バッド』にも出演していた実弟リュ・スンボム主演で撮ったアクション・エンターテインメント映画。世の人たちに知られることなく、世界を悪の手から守る「七仙」と呼ばれる達人たちがいる。正義感が強くて真面目だが融通のきかない警察官サンファンは、たまたまこの達人たちと知り合ってカンフーの修行を始める。動機はチンピラヤクザに負けない強さを手に入れることと、達人たちと修行をしているイジンという美女とお近づきになりたかったからだ。厳しい修行のかいあってヤクザに負けない強さを手に入れたサンファンだったが、その前には巨大な敵が現れる。それは「強さ」による世界支配を求めて七仙から離脱し姿を消していた、凄腕の達人フグンだった!

 現代の韓国社会を背景にしてカンフー映画を成立させるというコンセプトはわかるが、全体的にまだお話がよくこなれていない印象。登場人物の紹介が最初からギクシャクして、映画の最後の方になって「そんな人だったのか!」と気がつくこともあるし、話の筋道も追いかけにくい。(ただしこれは、字幕の翻訳が悪い可能性もある。)しかし僕がこの映画で一番戸惑ったのは、物語がコメディとして始まり、いつの間にか結構シリアスな話になってしまうことだ。アクション・コメディはカンフー映画の本場香港でもお馴染みだし、そこでもコミカルな話の合間にシリアスなエピソードを放り込むことはある。逆にシリアスな話の中に、ユーモアやギャグをまぶしていくこともあるだろう。でもこの映画はそもそもコメディをやりたいのかシリアスな映画にしたいのか、その狙い自体がどっちつかずになっている。映画の足場がぐらついているのだから、これではどんなエピソードも威勢よく立ち上がってこない。

 劇中にはデジタル技術やワイヤーを使ったアクションが満載。役者たちもがんばっていて、どれもそれなりに見応えのあるシーンになっている。特にフグンを演じたチョン・ドゥホンは韓国映画界でも指折りのアクション監督だそうで、最後に彼が主人公たちと戦うシーンは香港映画ばりの迫力あるアクション・シークエンスになっている。もっとも殺陣の組み立てなどはどれも「香港映画みたい!」というもので、取り立ててオリジナルがあるわけではないのだけれど……。香港活劇を現代流にリニューアルしたアクション・シーンとして、我々は既に『マトリックス』を観てしまっているわけだから、今さらこんな古色蒼然たるアクションをやられてもな〜、という気はする。

 韓国にもカンフー映画が好きな人たちが大勢いて、そういう人たちが好きなカンフー映画を作ったらこうなったというのはわかるのだが、せっかくならもう少し新しさが欲しい。カンフー映画と出会っていない「現代の風景」はたくさんあるだろうに。

(原題:阿羅漢 Arahan)

10月下旬公開予定 新宿ジョイシネマほか全国ロードショー
配給:UIP
2004年|1時間54分|韓国|カラー|ビスタ|SRD、SR
関連ホームページ:http://www.uipjapan.com/
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