わたしの季節

2005/07/13 映画美学校第2試写室
重症心身障害児(者)施設、第二びわこ学園の記録。
映画としての中心が見えにくい。by K. Hattori

 滋賀県立近江学園での療育実践の結果を受けて、1963年(昭和38年)に西日本で最初の重症心身障害児施設として開設されたびわこ学園。第二びわこ学園の開設は、それから3年後の1966年(昭和41年)だった。だが40年近い歳月で建物や施設が老朽化したことから、第二びわこ学園は2004年に新築された新しい施設へ移転する。この映画は移転直前の第二びわこ学園の様子を記録している。監督は『こどものそら』の小林茂。

 重度の障害を持つ子供たちの施設として作られたびわこ学園だが、40年近い歳月がたって、古くから施設にいる子供たちは立派な大人になっている。大人どころか、もう老人と言ってもいい年齢に差しかかっている人たちも多い。障害の内容も人それぞれ。福祉関係者や障害者の親族がしばしば「障害は個性である」と言うことがあるが、僕はその言葉がどうも欺瞞のように思えてならなかった。でもこの映画を観ると、なるほど「障害は個性だな〜」と感心してしまう。登場する障害者たちは、見事にてんでバラバラに個性的だ。

 第二びわこ学園で暮らす障害者は百数十名。映画はそこから数人にスポットを当てているが、僕が最初に「すげ!」と思ったのは、猛烈な速度で粘土をこねくり回す中年の障害者の姿だった。粘土の山から手頃な大きさの土をつかみ取り、丸め、ちぎり、指やへらで穴を開け、それをまた押しつぶし、小さなかたまりをむしり取って口の中に放り込み、また粘土を丸め、口の中から粘土を吐き出してくっつけ、また穴を開け、丸め、ちぎり……。その作業をまったく何の迷いもなく、ノンストップで繰り返していく。彼にとって粘土細工にはどんな意味があるのか。どの時点でその作業は完成なのか。この姿を観ていると、モノ作りという行為の根源的な意味について考えさせられてしまう。すごいな〜。

 登場する個々の人物やエピソードは面白いのだが、全体としては「てんでバラバラな個性」同士のつながりが希薄で、映画作品としてのまとまりは弱いような気がした。これは作品の成り立ちに深くか関わってくることなのかもしれないが、小林監督は構成能力がやや弱いのかもしれない。中短編作品を集めた『こどものそら』では気にならなかったが、今回は印象が散漫で映画の焦点が定まっていないように感じた。小さなエピソードを集めても、それが大きなお話にならない。この映画は最後まで、「てんでバラバラな個性」が「てんでバラバラ」なまま同居しているのだ。

 それにしても、映画に登場する施設職員たちの姿には考えさせられるものがあった。映画に登場する「てんでバラバラな個性」を丸ごと受け止めて、そのありようをすべて肯定する姿は感動的ですらある。ここでは障害が否定されていない。「障害はあるけれど○○だ」といった反語がない。障害も含めて、その人の全部が、ありのままに存在しているのだ。

9月上旬公開予定 ユーロスペース
配給:協映
2004年|1時間47分|日本|カラー|スタンダード
関連ホームページ:http://homepage2.nifty.com/kyoeistudio/
DVD SpecialShop DiscStation 7dream_88_31 TSUTAYA online
ホームページ
ホームページへ