コンスタンティン

2005/05/11 錦糸町シネマ8楽天地(シネマ2)
人気コミックをキアヌ・リーブス主演で映画化したらしい……。
映画にオリジナリティが感じられない。by K. Hattori

 『マトリックス』のキアヌ・リーブスが、悪魔と戦う武闘派エクソシストを演じるファンタジー・アクション。主人公ジョン・コンスタンティンは幼少時から悪魔を見る能力を身につけていたが、そのおぞましさに耐えきれず自殺を図る。だが自殺者の魂は地獄に墜ちる。幸か不幸か一命を取り留めたコンスタンティンは、一瞬かいま見た地獄に再び戻ることを恐れて、悪魔狩りに精を出すようになったのだ。彼は双子の妹を失った女性刑事アンジェラと知り合うが、じつは彼女の妹の死には大きな秘密が隠されていた……。

 原作はシリーズ化されている人気コミック。劇中には天使や悪魔や地獄が何度も出てくるが、聖書やキリスト教に詳しくなくても話はわかるはずだ。これはファンタジー小説が、北欧神話やケルト神話などからキャラクターを借りてくるのと同じ。北欧神話に詳しくなくても『ロード・オブ・ザ・リング』が楽しめるように、聖書を知らなくても『コンスタンティン』は楽しめるはずだ。

 聖書やキリスト教の側から観るならば、主人公の「ジョン・コンスタンティン」という名前は「ヨハネ」と「コンスタンティヌス」から取られていて、ヨハネは有名な黙示録を書いた幻視者の名前、コンスタンティヌスはローマ帝国で初めてキリスト教を公認し、死の直前に異端(アリウス派)の洗礼を受けた軍人出身のローマ皇帝の名前だということがわかる。映画の中では人間世界が、悪魔と神が代理戦争をしている戦場として描かれているが、これはそっくり「ヨハネによる黙示録」の世界観から借りてきたものだ。

 人気コミックの映画化というくせに、僕はこの映画にあまりオリジナリティを感じなかった。悪魔払いの場面は『エクソシスト』や『ロスト・ソウルズ』を連想するし、悪魔が復活するために霊感の強い女性の肉体を必要とし、それを主人公が阻止しようとする話は『エンド・オブ・デイズ』とあまり変わらないように思える。やけに俗っぽいスタイルの悪魔や天使が現代の街の中を闊歩するというのは、『ブック・オブ・ライフ』や『ドグマ』みたい。この映画の新しさは、いったいどこにあるんだろうか。

 物語の流れとしては、自分が救われたいという利己的動機から悪魔払いをしていた男が、最後は自己犠牲の精神を発揮して救済され、信仰(神への信頼)を取り戻すという話になっている。でもこの話の流れ自体が、そもそも『エクソシスト』をなぞっているのではないだろうか。(『マトリックス』の匂いも少々……。)いっそのこと主人公が救済されず、永久に人間界と地獄の間をさまよっていた方が、物語のオリジナルという点ではよかったと思うけど……。

 原作はシリーズだから映画も人気があればシリーズ化があり得たのだろうが、1作目がこれでは次はなさそうに思える。ピーター・ストーメアのサタンがなかなかお茶目で愉快なオヤジなのだが、これで見納めかな。

(原題:Constantine)

4月16日公開予定 丸の内ピカデリー1ほか全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2005年|2時間1分|アメリカ|カラー|2.35:1|DTS、Dolby Digital、SDDS
関連ホームページ:http://constantine.warnerbros.jp/
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