彼女を信じないでください

2005/04/12 メディアボックス試写室
韓国映画のレベルの高さを感じさせるラブコメ。
笑って笑って最後はホロリと感動。by K. Hattori

 詐欺罪で服役していたヨンジュは、刑務官たちの前でしおらしく振る舞ってまんまと仮釈放に成功。ところが運悪く電車の中で、若い男ヒチョルが指輪をスリ取られる現場を目撃してしまう。見て見ぬふりをするのは簡単だが、ここで自分に盗みの嫌疑がかかれば仮釈放は取り消されてしまうかもしれない。スリを追いかけて指輪を取り返したヨンジュだが、ヒチョルに指輪を返す前に列車は発車。これでは結果として、自分が指輪を盗んだも同然ではないか! ヨンジュはヒチョルの実家に先回りして彼の家族に指輪を返そうとするのだが、言葉の行き違いから家族たちは彼女を息子の婚約者だと信じ込んでしまう。一方、指輪をなくして意気消沈したヒチョルが実家に帰ってみると、そこでは電車の中で知り合った女が自分の婚約者扱いされていた。彼女は婚約者ではないと即座に否定したヒチョルだったが、それが自分の立場をいっそう悪くしてしまうことに……。

 凄腕の女詐欺師が育ちのいいお坊っちゃまを手玉にとるうちに、彼に対する本当の好意が芽生えていくという、プレストン・スタージェスの『レディ・イヴ』みたいな物語。主人公のヨンジュを演じるのは『リメンバー・ミー』のキム・ハヌル。彼女にきりきり舞いさせられるヒチョル役はカン・ドンウォン。監督のペ・ヒョンジュンはこれがデビュー作だという。

 映画は導入部の段取りに少しもたつくところがあるが、ヨンジュが男の実家を訪ねるあたりからテンポがずっとよくなり、主人公ふたりが合流してからは話の流れが途切れず快調に流れていく。ヒチョルが何をどう弁解しても、それが裏目裏目に出て彼自身を窮地に追い込んでいくあたりは爆笑に次ぐ爆笑。さっさと誤解を解いて帰ろうとしていたヨンジュが敵意むき出しのヒチョルに腹を立て、開き直ってより事態を複雑にしていくのも痛快だ。敵対していたふたりが、少しずつ打ち解けていく展開も自然に観られる。

 序盤のもたつきでわかる通り、監督の演出手腕はそれほど高いわけではない。しかし脚本の完成度と出演している俳優たちの魅力で、映画は第一級のラブ・コメディになっている。登場人物に悪者がいないのがいい。ちょっとした言葉の行き違いや誤解の積み重ねが、大きな事件になっていく。その組み立てには無理がなく、エピソードの積み重ねは教科書通りとも思えるほど古典的で保守的なものに思える。例えば映画の終盤で、ヒロインの刑務所仲間が現れるくだりなどは、かなり手垢がついた印象さえ受ける。でもそれを補って余りあるのが、キム・ハヌルの素晴らしい存在感。

 映画の背景になっているのは家族の問題。特に都市部の大学で学んでいる学生が、田舎に帰って家業を継ぐべきかどうか悩むという話だ。これは日本人である我々にも、とてももわかりやすい話だと思う。これは脚本の権利を買って、日本でもそのまま再映画化することを考えた方がいいと思うぞ。

(英題:Too Beautiful To Lie)

5月28日公開予定 VERGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ
配給:ハピネット・ピクチャーズ 共同配給:東京テアトル
宣伝:ハピネット・ピクチャーズ、グアパ・グアポ
2004年|1時間55分|韓国|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.kanoshin.com/
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