きみに読む物語

2004/12/21 GAGA試写室
ありきたりな話だと馬鹿にしていたら最後に泣かされた。
甘いおとぎ話だがこれはそれでいい。by K. Hattori

 映画『メッセージ・イン・ア・ボトル』や『ウォーク・トゥ・リメンバー』の原作者ニコラス・スパークスの同名小説を、『シーズ・ソー・ラヴリー』『ジョンQ/最後の決断』のニック・カサヴェテス監督が映画化したラブストーリー。郊外の老人ホームで暮らすデュークは、同じホームで暮らす痴呆症の老女にある物語を読み聞かせるのを日課にしている。痴呆症という薄明の中でぼんやりと日をすごす老女は、デュークの物語を聞くと少しずつ目を輝かせるようになっていく。

 その物語は平和な1940年代に出会った若い恋人たちの話だ。南部の小さな田舎町に夏の間だけやってくるお金持ちの令嬢アリーに一目ぼれしたノアという青年が、熱烈な求愛でついに彼女のハートを射止める。だがノアは貧しい労働者階級の青年で、ふたりの交際をアリーの両親は快く思わない。ふたりが身も心もひとつになろうとした夜、ついにアリーの両親はふたりを強引に別れさせてしまう。ノアは町を去った彼女のために1年間毎日手紙を書き続けたが、それに返事が来ることはなかった。やがて戦争がやってくる。ノアの心は戦場で深い傷を受け、アリーはノアを忘れて新しい恋人と婚約するのだった……。

 遠い過去に起きた若い恋人たちの物語と、現代の老人ホームでその物語を読む老人の話が交互に描かれるのだが、この老人というのがじつは……という種明かしが映画の中盤に用意されている。この種明かしは映画の序盤からそれとなく匂わせてあるので、ここで驚く観客はまずいないだろう。むしろ僕が驚いたのは、この時点でこの種を明かすというタイミングにあった。これはデュークが物語を全部読み終えた後に、初めて明かされるものだと思い込んでいたのだ。「え? こんなところであっけなく種をばらしちゃうの?」というのが僕の感想。しかしこれはこれで、終盤の盛り上がりに向けての用意周到な計算だったりするのだ。

 正直言って過去の話も現代の話も、僕にはさほど新鮮なものとは思えなかった。若い恋人たちの話はいかにも通俗的なメロドラマ。何十年も前の少女漫画みたいな展開だ。老人たちの話も気の毒にという同情はわくものの、それ以上の共感が得られるようなものではないと思う。ところがこの映画は、ノアとアリー、デュークと老女の関係について一通りの種明かしが済んだ後から、感動シーンの波状攻撃が始まるのだ。これには参った。

 過去のシーンで若い恋人たちを演じたカナダ人俳優、ライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスの初々しさが光る。しかし映画を感動モードに引っ張り込む大役は、デューク役のジェームズ・ガーナーと老女役のジーナ・ローランズが受け持っているのだ。特にローランズは痴呆老人特有の焦点の定まらない視線と、一瞬にして正気を取り戻した表情の使い分けで観客を切ない気持ちにさせる。アリーの母を演じたジョアン・アレンも好演している。

(原題:The Notebook)

2月5日公開予定 丸の内プラゼールほか全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
宣伝:ギャガ宣伝ウエスト、スキップ
2004年|2時間3分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーSR、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.kimiyomu.jp/
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