カンフーハッスル

2004/12/16 ソニーピクチャーズ試写室
チャウ・シンチーがカンフーアクションに挑んだ最新作!
リッチで贅沢な作りのアクション・コメディ。by K. Hattori

 『少林サッカー』のチャウ・シンチーが、監督・製作・脚本・主演を兼ねた最新のアクション・コメディ。タイトルを見れば一目瞭然だが、今回は奇想天外なカンフー映画になっている。CGとワイヤーワークを使ったアクションは『マトリックス』以来ハリウッドでもすっかり主流になった観があるが、今回『カンフーハッスル』でメイン・アクション・コレオグラファーを担当しているのは、その『マトリックス』や『グリーン・デスティニー』で世界中を仰天させたユエン・ウーピン。そしてもうひとりのアクション・コレオグラファーはサモ・ハン・キンポー。もうこの顔ぶれだけで、何やらものすごいのだ。

 ギャングたちが抗争を繰り広げ、覇権を争っていた時代。そこで急速に勢力を伸ばしていたのは、敵対勢力に情け容赦のない冷酷なギャング団「斧頭会(ふとうかい)」だった。だがそんな物騒な情勢も、貧しい地域にはまるで関係がない。豚小屋砦と呼ばれる安アパートの人々は、貧しいながらも暴力とは無縁の平和な日々を送っていた。そこに大物ギャングに憧れる街のチンピラ、シンがやってくる。斧頭会を名乗ってアパートの住民から小銭をゆすり取ろうとしたシンだったが……。

 この映画の面白さは、徹底した「やつし」の繰り返しにある。「やつし」というのは、高貴な身にある者や大きな実力を持つ者が、あえて低い地位に身を落としている状態。それが最後に正体を現して、敵をバタバタとなぎ倒すところにカタルシスがある。時代劇の「水戸黄門」や「遠山の金さん」はその代表例。『カンフーハッスル』にはそんな「やつし」の例が、これでもかこれでもかと何度も出てくる。いきなりシンに血反吐を吐かせる人のよさそうなおばちゃんから始まって、クライマックスで主人公と戦うカンフーの達人に至るまで、見た目と実力にひどいギャップがあり、その落差が面白味や笑いを生み出している。

 「あの人がこんなことを!」という意外性も含めて、映画の見せ場は何度か繰り返されるアクションシーンだろう。京劇風の賑やかできらびやかな音楽に合わせて、荒唐無稽な戦いが何度も繰り返されるのは観ていて本当に楽しい。このアクションシーンはかなり大真面目な戦いとして演出されているのだが、その内容が桁外れに現実離れしているので、内容が大真面目になればなるほど笑いが生まれる。

 真っ平らなグラウンドが舞台だった『少林サッカー』に対し、今度の映画は室内やアパートが戦いの舞台になるためアクションが立体的で複雑になり、その分だけ見せ場も多いものになっている。奥行きのある美術や撮影もすごく立派に作ってあり、街並みの巨大なオープンセット(これは撮影所に常設のものだろう)も効果的に使われて、大スターが作った大作映画らしいリッチな香りも漂ってくる。100点満点で100点の映画。いや〜、面白かった!

(原題:Kung Fu Hustle)

1月1日公開予定 丸の内ルーブルほか全国松竹東急系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2004年|1時間39分|中国、アメリカ|カラー|SDDS、SRD
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/kungfuhustle/
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