ラマン La'mant

2004/11/29 映画美学校第2試写室
やまだないとの同名コミックを廣木隆一監督が映画化。
男3人はいいけど、安藤希はどうかなあ。by K. Hattori

 人気コミック作家やまだないとの同名作品を、安藤希主演で映画化したスキャンダラスな「愛」の物語。17歳の誕生日を迎えた少女は、3人の男たちと1年間の愛人契約を結ぶ。男たちは少女を「華子」と呼び、少女は男たちを「A」「B」「C」という匿名で呼んだ。学校の帰り道に町はずれの古びた洋館に立ち寄り、少女は3人の男たちに身体を与えるのだ……。3人の男たちを演じるのは、田口トモロヲ、村上淳、大杉漣というそうそうたる顔ぶれ。監督は『ヴァイブレータ』の廣木隆一で、『ヴァイブレータ』同様、ヒロインのモノローグが印象的に使われる映画になっている。

 やまだないとの原作はだいぶ前に読んだことがあるような気もするが、ストーリーの印象はほとんど残っていない。(単行本は97年が初版だ。)彼女の作品はこれまでにも『フレンチドレッシング』が映画化され、OV作品も何本か作られ、「私立探偵 濱マイク」には脚本家としても参加している。映像作家を触発する何かが、彼女の作品の中にはあるのかもしれない。今回の映画は、少女を愛人にする男たち3人の人相風体がいかにも「やまだ作品!!」という感じだし、彼らが暮らす生活感のない洋館のたたずまいもいい雰囲気になっていると思う。ただ安藤希というのは、どうなのかなぁ……とも思うけど。これは友人役で登場する前田綾花とそっくり差し替えてしまった方が、人物のアンサンブルとしてはバランスのいいものに仕上がったような気がする。まあこのあたりのキャスティングは、映画撮影前の時点で既に動かしようのない決定事項なのかもしれないのだけれど。

 なぜ少女が「華子」と呼ばれるのか、なぜ3人の男たちが少女を愛人にしようとしたのかなどが、映画の途中で少しずつ明らかにされていく構成。春夏秋冬の時の流れを、巧みに画面の中に取り込んでいくロケーション撮影のうまさ。夏休みの補習。虫かごの中のセミ。花火大会。印象的な長い階段のある風景。やがて町には雪が舞う。1年の間には少女が友人に誘われて出かけた映画館である事件に遭遇したり、大杉漣扮するCが突然病院に担ぎ込まれるなど、いろいろなことが起きる。しかしそうした出来事がどんな変化を登場人物に与えたのかが、風景の移ろいほどには明確に描かれていないのが物足りない。少女と3人の男たちがそれぞれ抱えているであろう心の傷をあえて見せることなく、4人の関係性だけを通してその「存在」を浮かび上がらせようとする狙いはそれなりに成功しているようにも思うのだが、その「存在」の向こう側にある個別のエピソードが気になり、もどかしく感じられる。

 男たちとの1年が終わった時、少女は1年前とどう変わったのか。男たちは少女の存在を媒介にして、それまでと違った何かを手に入れることができたのか。ラストシーンで無邪気に笑う彼らの姿から、その本当のところが見えてくるようには思えなかった。

今冬公開予定 渋谷シネ・アミューズ(レイト)
配給:スローラーナー
2004年|1時間32分|日本|カラー|ヴィスタ・サイズ
関連ホームページ:http://www.slowlearner.co.jp/
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