スクール・オブ・ロック

2004/09/30 新文芸坐
ジャック・ブラックが名門校で子供たちにロックの英才教育。
演奏シーンは本物。これが楽しい。by K. Hattori

 ロックスターになることを夢見ながら、いつまでも芽が出ないデューイ。しかし夢だけで飯は食えず、早急に部屋代を支払う必要に迫られる。そんな時、代用教員をしているルームメイトのネッドにかかってきたのが、名門ホレス・グリーン小学校から臨時教員になってほしいという依頼の電話。デューイは自分がネッドになりすまして、まんまと名門校の教員として働き始める。自分のバンドを追い出されたばかりのデューイは、生徒の中から楽器のできそうな生徒を引き抜き、特別授業と称してバンドを組むことにする。目指すはバンドバトルの優勝者に与えられる多額の賞金だが……。

 社会からドロップアウトした男が子供たちを教える立場になり、そこでいろいろな事件を通して成長していくというお話。これはエミリオ・エステヴェス主演の『飛べないアヒル』(マイティ・ダック)シリーズ、ダニー・デヴィート主演の『勇気あるもの』などに連なる映画だろうし、はみ出しもののロック野郎がお行儀のいい名門校に新風を巻き起こすという筋立ては『天使にラブ・ソングを…』を連想させもする。でもこの映画が下敷きにしているのは、1957年に初演され1962年に映画化されたミュージカル『ミュージックマン』だろう。詐欺師が楽器を売りつけるため音楽教師に化けて町を訪れるが、そこでひとりの女性に出会って心を入れ替え、本当の音楽教師として奮闘する物語だ。(ただし映画は日本未公開。)

 『スクール・オブ・ロック』は『ミュージックマン』のロック版だが、単に設定ロックに置き換えただけでなく、映画の中にきちんと反骨のロック魂が流れている。それはお行儀よく「よい子」の型にはめられてしまった子供たちに、「自分らしく生きろ!」と呼びかけるメッセージだ。映画に出演している子供たちは、実際に歌ったり演奏できる子供たちをオーディションして選ばれている。吹き替え演奏や歌では、「自分らしく」というこの映画のテーマに反するからこれは当然だ。主演のジャック・ブラックは俳優としても有名だが、テネイシャスDというバンドのギタリスト、ボーカリスト、ソングライターとしても知られているそうで、当然この映画の中の歌も本物だ。

 教員資格のない人間が簡単に名門校の仕事にありつき、頭の良さそうな子供や周囲の教員たちからまるで怪しまれないなど、物語にリアリティを求めれば奇妙なところばかり。しかしこれはそもそも、リアリティを求めている映画ではない。下敷きになっている『ミュージックマン』と同じ、他愛のないおとぎ話なのだ。そのために駆り出されているのが、ジャック・ブラックのオーバーアクションであり、ジョーン・キューザックの校長先生というわけ。しかしこの映画、時々リアルな現実にふと引き戻され、観ていて白けてしまう瞬間が何度かあった。これはリチャード・リンクレイターという監督の資質なのかな……。

(原題:The School of Rock)

4月29日公開 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:UIP
2003年|1時間50分|アメリカ|カラー|アメリカンビスタ|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.schoolofrock-movie.jp/
ホームページ
ホームページへ