カーサ・エスペランサ

赤ちゃんたちの家

2004/04/09 GAGA試写室
養子を迎えようと南米某国のホテルに集まった女たち。
アメリカ人の家族観がよくわからん。by K. Hattori

 南米の某国にあるリゾート風のホテルと、そこに長期逗留している6人のアメリカ人女性たち。彼女たちは近くの孤児院から養子を迎えるために、好むと好まざるとに関わらず、このホテルで足止めを食っている母親予備軍たちだった。申請書類は提出済みで、あとは子供を連れてアメリカに帰ればいいだけなのに、特にこれといった理由もなしに子供は渡されず、帰国も伸び伸びになっている。そんな女たちが顔をつきあわせて、話したり考えたりすることは……。

 監督は『フィオナの海』のジョン・セイルズ。出演は『セクレタリー』のマギー・ギレンホール、『キル・ビル』のダリル・ハンナ、『ポロック/2人だけのアトリエ』のマーシャ・ゲイ・ハーデン、『フィオナの海』にも出演していたスーザン・リンチ、『海辺の家』のメアリー・スティーンバーゲン、『ホーンティング』のリリ・テイラーなど。ホテルの女主人役でリタ・モレノが出演している。物語の舞台はラテンアメリカのどこかの国という設定で、具体的な国名は出されていない。撮影はメキシコで行われているが、メキシコには映画に登場するような養子制度が存在せず、むしろ映画の状況はチリに似ているらしい。

 アメリカ人は夫婦に子供が生まれない場合、ごく当たり前の選択肢として養子を迎えることが多い。映画スターの中にも何人もの養子を迎えている人たちがいる。夫婦が人種の異なる子供を養子にすることも多い。実子であろうと養子であろうと、本当の親子には違いないという感覚が根付いているようだ。この映画の主人公たちも、人種の異なるラテンアメリカの子供を養子に迎えようとしている。こうした感覚が、僕にはどうも理解しにくい。

 日本人は「血のつながり」にこだわり、養子を取ることよりも最先端の不妊治療(代理母出産なども含む)に向かうことが多いのではなかろうか。向井亜紀の代理母出産に賛否はあれど、そうまでして子供がほしいという彼女の気持ちは、日本人ならわりと誰でも理解できると思う。でも「子供ができないなら養子を」という感覚が、僕にはピンと来ない。親戚同士で養子縁組みする例はよく聞くけれど(例えば美空ひばりと加藤和也)、ハリウッドのスターのように、第三世界の子供を養子に迎える例なんて聞いたこともない。どうもアメリカ人と日本人とでは、「親子」という感覚が違うのではないだろうか。逆に日本にアメリカでは珍しくて日本に多いのは親子心中だったりするわけで……。

 そんなわけで僕はこの映画を観ていても、一刻も早く養子を連れてアメリカに帰りたいと願う主人公たちの気持ちが、今ひとつよくわからなかった。ストーリーらしいストーリーもなく、ひたすら主人公たちの「気持ち」が全面に押し出されるこの映画で、その気持ちのバックボーンが理解できないのは辛い。自分がどうしようもなく日本人であることを、改めて痛感させられた映画でした。

(原題:Casa de los babys)

初夏公開予定 テアトルタイムズスクエア
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
宣伝:ギャガGシネマ海、メディアボックス
2003年|1時間35分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|SRデジタル
関連ホームページ:http://www.casa-esperanza.net/
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