ブラザー・ベア

2004/03/20 日劇3
クマになった青年と子グマの旅の先にあるものは……。
ドラマが平板でどうにも退屈。by K. Hattori

 公開からまだ間がないはずなのに、映画館がガラガラになっているディズニー映画。最近のディズニー映画を観ていていると、「こいつら本当にやる気あるのか?」という疑問ばかりがわいてくる。この映画は1時間半に満たないコンパクトな映画だが、作りがまったくマンネリ化していて何の新しさも感じられない。『リトル・マーメイド』や『美女と野獣』で新生ディズニーをアピールし、観客をワクワクドキドキさせてくれた頃の輝きは、今のディズニーからまったく消え去ってしまった。

 物語の舞台はまだマンモスが地上を歩いていた氷河時代のアメリカ。仲のよい3人兄弟の末っ子キナイは、成人の儀式でシャーマンから「愛」のトーテムを割り振られたのが不満で仕方がない。「愛」を象徴する動物はクマだというが、どうせならもっと雄々しくたくましいトーテムが欲しかったのに……。腹立ち紛れに集落近くに現れたクマを挑発したキナイは、逆にクマの反撃にあって危機一髪。そこを助けた上の兄は、キナイを助けるために命を落とす。復讐に燃えたキナイは死闘の末にクマを倒すのだが、その時上空から差し込んだ光に包まれて、自分自身がクマに姿を変えられてしまう。そんな事情を知らない下の兄は、長兄に続いて弟もクマに殺されたと思いこんで復讐の鬼となる。一方キナイは人間の姿を取り戻すため、迷い小熊のコーダを道案内に遠い山まで旅をすることに……。

 この映画の一番の問題は、ドラマの構成にひねりがないことだと思う。人間の姿を戻すために遠い山まで旅をして、そこで物語が終わってしまうのだ。もちろんその間には「あっと驚く真実」もあるし、「血を分けた兄弟同士の葛藤」もあれば、「主人公の意外な選択」という結末も用意されている。でもドラマの構成に起伏がないから、こうした物語のあやもドラマチックなエピソードに見えないのだ。「ああ、映画を観たなぁ」という満足感とはほど遠いエンディングには、欲求不満がつきまとうばかり。きっとディズニーはこのキャラクターを使って、『ブラザー・ベア2/コーダの大冒険』とか、『ブラザー・ベア3/キナイの初恋』とか、ビデオ市場向けの続編を乱発するつもりなのでしょう。要するにこの映画は、ディズニー・ブランドによる新キャラクターのお披露目なのです。

 クマを敵視していた主人公は、やがてクマにも愛があることを知る。ここから昨今のアメリカの対外政策に対する批判を読み取る人もいるかもしれないが、それほどアメリカはリベラルじゃないと思う。クマが象徴している国とは、昔からロシアだと決まっているからだ。アメリカは冷戦時代に常にロシア(ソ連)を仮想敵にしてきたけれど、冷戦が終わって10年がたった今になって、「ロシアもじつはいいヤツなんだよ」と言っているだけ。コーダはモスクワ・オリンピックのマスコットだった「こぐまのミーシャ」にそっくり。

(原題:BROTHER BEAR)

3月13日公開予定 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:ブエナビスタ
2003年|1時間25分|アメリカ|カラー|ビスタ、シネマスコープ|DTS、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.disney.co.jp/bbear/
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