N.Y.式ハッピー・セラピー

2004/02/17 UIP試写室
アダム・サンドラーとジャック・ニコルソン主演のセラピスト・コメディ。
怒りを静めるには「アイ・フィール・プリティ」を歌え。by K. Hattori


 ペット用品メーカーに勤めるデイブは、気の優しい内気な男。穏やかで物静かな性格は長所である一方、周囲に自分の意志を強く自己主張できないことで損をすることも多い。そんな彼が出張の飛行機の中で客室乗務員から不当な言い掛かりをつけられ、機内暴力の犯人として逮捕されることになってしまった。裁判所は彼に、暴力に結びつく怒りの感情をコントロールするため、専門のセラピストから治療を受けるように命令する。ところが裁判所が指定したセラピスト、バディ・ライデル医師というのがかなりの変わり者。30日間の密着セラピーに自宅まで押しかけてきたバディによって、デイブの生活はハチャメチャな混乱状態にたたき込まれてしまう。

 主人公デイブを演じるのは、アメリカでは売れっ子なのに日本ではどの作品もパッとしないアダム・サンドラー。変人医師のバディ・ライデル役にはジャック・ニコルソン。デイブの恋人リンダを演じているのは、僕のお気に入り女優のひとりマリサ・トメイ。監督は『ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々』のピーター・シーガル。サンドラー作品の常で、この映画も脇役の顔ぶれが豪華絢爛。バディのセラピーを受けている患者役で、ルイス・ガスマン、ジョン・タトゥーロ、さらにはテニス選手のジョン・マッケンロー。さらにウディ・ハレルソン、ヘザー・グラハム、ジョン・C・ライリー、ハリー・ディーン・スタントンなどが出演し、元ニューヨーク市長のジュリアーニや、ヤンキースのジーターやクレメンスなども顔を出す。女性検事役のリン・シグペンはこれが遺作。

 どんなに理不尽な目に遭わされても、それを甘んじて受け入れてしまうデイブに、映画の序盤はイライラさせられっぱなしだ。それがセラピストの風変わりな治療をデイブが受け入れてしまう必然になるし、観客の側がバディの治療に何かしらの効果を求める心理的な導線になる。やがて見えてくるのは、デイブの中にある強烈なコンプレックス。彼は幼少時の体験がトラウマになって、自分自身にまったく自信が持てないのだ。他人に強く迫られると、最後は「こんな私が悪うございました」と卑屈に目を伏せてしまう。この極端な自己卑下男が、どう返信していくかが映画中盤以降の見どころだ。

 劇中に突然「国家の非常時」などという言葉が出てきたり、軍隊風の看板が何度もインサートされるのは“時節柄”なのだが、それらがすべてギャグになっているのがおかしい。途中で挿入歌として『ウエスト・サイド物語』の「アイ・フィール・プリティ」が歌われるのは、同じニューヨークを舞台にした精神科医と患者のドタバタ・コメディ『アナライズ・ユー』で「サムウェア」が歌われていたことのパロディだろうか。デ・ニーロの「サムウェア」もおかしかったけど、ニコルソンの「アイ・フィール・プリティ」もケッサク。そんなこんなの、ニューヨーク万歳映画でした。

(原題:Anger Management)

3月20日公開予定 シャンテ・シネ
配給:UIP
2003年|1時間45分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SDDS、SR
関連ホームページ:
http://www.uipjapan.com/ny/

DVD:N.Y.式ハッピー・セラピー
輸入ビデオ:Anger Management
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