4人の食卓

2004/02/04 東芝エンタテインメント試写室
幸せな結婚を間近に控えた男が新居で見た幻影の正体は?
いろいろやりたいのはわかる。でもそれが余計だ。by K. Hattori


 内装とリフォームの会社を経営するジョンウォンは、終電の車内で幼い姉妹が眠りこけている姿を見かける。だが翌日のニュースは、その姉妹が毒殺体で発見されたことを報じていた。ジョンウォンが見た姉妹は眠っていたのではなく、死んでいたのだ! この日から、彼の生活は奇妙な幻想に支配されるようになる。自宅の食卓に、死んだ姉妹の姿がはっきりと見えるのだ。幻影に恐れをなしたジョンウォンは実家である教会で寝泊まりするようになるが、そこで知り合った若い女にも同じ姉妹の姿が見えることを知って愕然とする。いったい自分の身に何が起きているのか? 姉妹の幻影が見えるヨンという女は何者なのか?

 『猟奇的な彼女』のヒロイン役で大ブレイクしたチョン・ジヒョン主演最新作だが、内容は前作とは打って変わったサイコホラー映画になっている。監督・脚本はこれが長編デビュー作のイ・スヨンという女性監督。ひとりの男がある事件に遭遇したことから、自分自身の記憶に隠された秘密を掘り下げていくというアイデアは面白い。しかしそれをこれほど回りくどい話にする必要があるのかは疑問だ。素直に「謎の提示」「謎の展開」「ドンデン返し」「結論」というストーリー展開にすれば、2時間10分の上映時間を30分は短縮できると思うし、もっとスリル満点の、ハラハラドキドキする心理サスペンス映画ができあがっただろう。僕は映画を観ている間、いったいこの映画の何が「謎」なのかよくわからなかった。映画を最後まで観て、ようやく「謎」が見えてくる。こんなミステリー映画、ありなのか?

 映画はどんな内容も表現も自由だと思うから、こうした映画がダメだとか禁止だとか言うつもりは毛頭ない。でも不必要にわかりにくい映画というのは、結局のところ作り手の自己満足に過ぎないのだ。この映画は「既成のホラー映画ではない映画を」という作り手の意欲ばかりが前に出て、それが非常にうっとうしいのだ。全体に色の彩度を抑えたシネマスコープの映像と、鼓膜が破れそうになるほど大音量の不協和音。主人公たちは常に不健康そうな青い顔。裸の赤ん坊をベランダから投げ落とすとか、子供がトラックにひかれるとか、女が投身自殺する様子をこれ見よがしに映し出す。この映画が観客の気持ちから引き出すのは、「恐怖」ではなく「嫌悪感」だ。こんな描写に知恵を絞るより、まずは本来の物語をどう語るかに頭を使うべきだった。

 ワンシーンを長回しで撮影したり、謎めいた言葉や会話を劇中に挿入するなど、はっきり言って余計な作家性の発露なのだ。それより前に、話をちゃんと1時間40分にまとめてほしい。無駄なエピソードを刈り込んでタイトな編集にした方が、この映画はずっと面白くなるし、テーマもはっきりと浮かび上がってくるはずだ。新人作家にチャンスを与えるのはいいけれど、こういうのはプロデューサーがもっとしっかりしなくちゃ!

(英題:The Uninvited)

初夏公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:東芝エンタテインメント
2003年|2時間10分|韓国|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:
http://www.4table.jp/

DVD:4人の食卓
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