ゴシカ

2004/01/07 ワーナー試写室
身に覚えのない夫殺しの罪で逮捕されたヒロインに起きる超常現象。
ハル・ベリー主演のホラー・ミステリー映画。by K. Hattori


 女子刑務所内の精神科病棟で医師として働くミランダは、女囚クロエの荒唐無稽な告白に耳を傾けていた。彼女はしばしば独房に現れる男にレイプされているというのだ。それは自分を性的に虐待した父を殺したクロエが、記憶を封印するために作り出した悲しい妄想だった。人間は極限状態の中で、忌まわしい記憶を心の奥深くに封印してしまう。だがその夜、ミランダ本人の記憶が失われる事件が起きる。自宅に戻る途中で道の真ん中に立ちつくす若い女を見たのを最後に、ミランダの記憶は途切れてしまう。次に彼女が気づいたのは、自分が勤めていた女子刑務所の精神科病棟。なんと彼女には、夫殺しの容疑がかけられていた……。

 ヒロインのミランダを演じるのは『チョコレート』でアカデミー主演女優賞を受賞したハル・ベリー。レイプ妄想を告白するクロエを演じるのはペネロペ・クルス。同僚の精神科医役に、ハリウッドのお騒がせ男ロバート・ダウニー・Jr.という配役。監督は『クリムゾン・リバー』のマチュー・カソビッツ。ジョエル・シルバーとロバート・ゼメキスの恐怖映画専門プロダクション「ダーク・キャッスル」の第4回作品だ。

 あらゆる現象を「傷ついた心が生み出した妄想」で説明してしまう科学万能論者のヒロインが、いつしか超自然現象の世界に引き込まれていくというのがこの映画の基本的な流れ。しかし映画を観ていても、ヒロインがいつどの段階で、何をきっかけに「超自然」を信じるに至ったのかがよくわからない。ヒロインが自分自身の目の前で起きている出来事が信じられず、最初は周囲に猜疑の目を向け、やがて自分自身の正気を疑うエピソードを映画の前半に配置してほしいところだ。「自分の見ているものは妄想だ」「私は正気じゃない」「私は治療を受けなければならない」「私は正気を取り戻して罪を償わなければならない」と精神的に追い込まれていくヒロインが、ある時突然、自分の周囲で起きている出来事の意味を正しく悟るシーンがほしいのだ。単に自分の見ているものだけを根拠に行動するのは、「正常な人」も「精神に障害を持つ人」も変わらないではないか。

 恐怖演出に特別なものはないが、これは『TATARI』『13ゴースト』『ゴーストシップ』などダーク・キャッスル作品の共通点かもしれない。主役クラスに数名の有名俳優がいて、あとはまったく無名キャストというのも同じ。これがダーク・キャッスルの作品作りに対するコンセプトなのだ。マチュー・カソビッツの演出は『クリムゾン・リバー』ほど大がかりにならない分、不気味な雰囲気だけを丹念に追いかけていて雰囲気は上々。パンチ不足なのは脚本の問題でもあるので、これを監督の責任にしてしまうのは気の毒だろう。ロバート・ダウニー・Jr.の使い方はなかなか上手い。でもペネロペ・クルスはゲストスターみたいな扱いで、それほど重要な役回りではなかったのが残念。

(原題:GOTHIKA)

2月公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2003年|1時間37分|アメリカ)
関連ホームページ:
http://www.warnerbros.co.jp/

DVD:ゴシカ
サントラCD:GOTHIKA
関連DVD:マチュー・カソビッツ監督
関連DVD:ハル・ベリー
関連DVD:ペネロペ・クルス
関連DVD:ロバート・ダウニー・Jr.

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