ルビー&カンタン

2003/12/26 映画美学校第1試写室
無口な殺し屋とおしゃべり好きのマヌケな強盗が一緒に脱走。
ジャン・レノとジェラール・ドパルデュー主演のコメディ。by K. Hattori


 マヌケな強盗事件で刑務所に入ったカンタンは、ひっきりなしのおしゃべりが原因で同房の囚人たちとトラブルばかり。そんな彼に刑務所長があてがったのは、逮捕されて以来一言も口を開かない殺し屋ルビーだった。ギャングから大金を奪ってギャングと警察の両方から追われているルビーは、刑務所で精神病を装ってダンマリ作戦。だがそんなルビーは、カンタンにとって絶好の話し相手となった。何しろ彼はカンタンの話を決して遮ろうとしないのだ。カンタンは勝手にルビーを親友だと決めつけ、彼が送られる精神病棟にもついて行き、とうとう一緒に脱走まですることになるのだが……。

 監督・脚本は『奇人たちの晩餐会』『メルシィ!人生』のフランシス・ヴェベール。お人好しのカンタンをジェラール・ドパルデューが演じ、殺し屋のルビーをジャン・レノが演じるコメディだ。最初に観て驚くのは、ジェラール・ドパルデューの劇やせぶり。子牛のようにでっぷり太った大男のドパルデューが、この映画では普通の大男になっている。どうやらドパルデューの激やせは映画撮影直前のことだったらしく、劇中では彼のことを「大男のでぶ」と表現する台詞がそのまま残されてしまった。2000年に心臓のバイパス手術をした後、節制してダイエットしたのだろうか。『ミッション・クレオパトラ』の時もお腹の周りにはアンコを入れていたけれど、顔がここまでやせてはいなかったと思うけど。

 映画はふたりが刑務所を脱走してギャングや警察から逃げ回るところまではいい調子なのだが、最後がどうにも尻切れとんぼ。空き家になったバーで出会った若い女のエピソードも、ルビーとカンタンの行く末もよくわからないままエンドマークになってしまう。これは本来、もう少し長い映画の予定だったのではないだろうか。映画の中盤で見せた主人公たちの会話の様子からすると、ルビーは殺された恋人の復讐に向かわず、自分自身のために新しい人生の目標を見つけなければならない。「やられたらやり返す」という生き方を改めて、ルビーは生まれ変わる必要がある。でも映画では結局、ルビーの生き方を変えられない。

 映画の最後の10数分は、僕にはどうしても納得できない。カンタンの「計画」がどんなものだったのかがそもそもよくわからないし、大男で怪力のカンタンがギャングの手下たちにあっさり袋だたきになってしまうのも奇妙。ひょっとしたらこれは何らかの事情があって、もっと長い映画になるはずのものを無理矢理ここで終わらせてしまったのではないだろうか。映画の長さがあと10分あれば、これとは別の結末で最後に「めでたしめでたし」になったと思うのだが……。どうにもヴェベール監督らしからぬ映画だ。

 カンタンとルビーのキャラクターは魅力的なので、この映画の続編を観てみたい気分。脇役たちも味のある芝居をする。このあたりは上手いです。

(原題:Tais Toi!)

1月17日公開予定 渋谷シネ・アミューズ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ、メディアボックス
宣伝:メディアボックス
(2003年|1時間25分|フランス)
関連ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/

DVD:ルビー&カンタン
関連DVD:フランシス・ヴェベール監督
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