渋谷怪談・渋谷怪談2

2003/12/10 メディアボックス試写室
渋谷にある呪いのコインロッカーを巡る恐怖の物語。
あいにくまったく恐くない。下手くそな映画だ。by K. Hattori


 渋谷の某所にあるコインロッカーは、女子高生たちの間で「幸福のロッカー」と呼ばれている。そのロッカーにプレゼントを入れてから好きな相手に渡すと、その恋は成就するというのだ。だが女子高生のうわさ話ほど不正確であてにならないものはない。じつはこのロッカーには数年前、生まれたばかりの赤ん坊の死体が遺棄されていたことがある。それ以来、このロッカーを使った人には常に不可解な死がまとわりつくようになったのだという。「幸福のロッカー」の正体は「呪いのロッカー」だったのだ!

 監督は「百獣戦隊ガオレンジャー」のガオイエロー役として知られ、昨年には『グローウィン グローウィン』という映画を撮っている堀江慶。脚本は『自殺マニュアル』の福谷修。映画の内容は女子高生の間に広まっている都市伝説を、『リング』『呪怨』『富江』などの人気ホラーシリーズと組み合わせたようなもの。物語の発端が若い男女のキャンプというのは『リング』だろうし、ある場所に近づいた者が次々に死に取り付かれるというのは『呪怨』、映画のモンスターであるサッちゃんのビジュアルは『富江』からのパクリ。別にシリーズにする必要もないのに、最初から『渋谷怪談』『渋谷怪談2』という2本の映画を作るあたりも、こうしたヒットホラーにあやかったものか。

 ホラー映画には「こうすれば恐い」という恐怖描写の法則があって、それさえ守っていればまず一定水準の恐怖は演出できるようになっている。物語などどうでもいい。むしろ物語にいびつな部分や破綻した部分があった方が、その不可解さが観客の心理的な動揺を運で恐さを生み出すのかもしれない。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』なんて、何がなんだかよくわからないけど恐かった。黒沢清は「人間はわからないものを恐がる」という信念から、どんな映画でも途中から強引に物語を破綻させてしまうほどだ。ホラー映画に関して言えば、つじつまが合っていなくてもOK。ひとつのシーンの中で、観客を動揺させて心胆を寒からしめればそれで上等なのだ。

 ところがこの『渋谷怪談』には、残念ながら恐いシーンがほとんど見あたらない。これは監督に「恐怖描写の法則」が理解できていないからだろう。脚本の中で用意されている恐怖ポイントは、映画の中でほとんどギャグに変化してしまっている。恐い映画を観ると僕は笑ってしまうクセがあるのだが、僕はこの映画を観て、恐怖からではなく、おかしくて笑ってしまった。この脚本も理屈が通らないところや弱点はいろいろあるのだが、そもそも理屈を超えたところで生じるのが恐怖だからこれは許容範囲内。問題は堀江監督にホラーのセンスがないことだ。人間の本能に訴える闇の力が、この映画にはまったく宿っていない。正続編合わせて2時間半の上映時間は、ひどく退屈なものでしかなかった。もったいぶって2本に分けるような映画ではないと思う。

2004年新春第2弾公開予定 渋谷シネ・ラ・セット
配給:ビターズ・エンド 宣伝:スキップ
(2003年|1時間11分&1時間12分|日本)
関連ホームページ:
http://www.allcinema.net/sk/

DVD:渋谷怪談
主題歌「メランコリック」収録CD:サイレンス(清家千晶)
主題歌「スミレ」(清家千晶)収録CD:Feel 2
小説版:渋谷怪談(福谷修)
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