ブルドッグ

2003/10/06 GAGA試写室
ヴィン・ディーゼルが型破りな捜査間を演じるアクション映画。
麻薬組織に妻を殺された捜査官の復讐劇だ。by K. Hattori

 メキシコとアメリカの間に巨大な麻薬輸送ルートを作った麻薬王メモ・ルセロが、捜査開始から7年目にしてついに逮捕された。ルセロの麻薬ルートが潰されたことで、アメリカでは麻薬の価格が高騰。さらにルセロの後釜を狙う「ディアブロ(悪魔)」なる男が現れ、ロスの麻薬組織を再編成し始める。ディアブロは手下を通じてDEAの捜査官にも手を伸ばし、ルセロを逮捕したショーン・ヴェッター捜査官は目の前で妻を殺されてしまった。ショーンは妻を殺したディアブロを倒すため、その正体を探り始めるのだが……。

 主演は『ワイルド・スピード』や『トリプルX』で、ハリウッドの新しいアクションスターになったヴィン・ディーゼル。この映画の主人公ショーンは、正義漢だが同時にワルの要素も持っている。これはディーゼルにとって、いつも演じているお馴染みのキャラクターだ。監督は『交渉人』のF・ゲイリー・グレイ。

 主人公ショーンは元々ストリート・ギャングとして警察に追われる身だったが、今はDEAの捜査官として麻薬撲滅のために働いているという設定。彼を更生させて精神面でも大きな支えとなってきた妻が殺されたことで、ショーンは復讐の鬼となる。そこに見えるのは、かつてのストリート・ギャングの顔だ……。この映画の中で、主人公は「正義の味方」と「血も涙もない復讐の鬼」との間を揺れ動く。品行方正な優等生ではない元ワルが、愛する人を奪ったヤツに復讐するため、悪党とでも平気で手を組もうとする。こうしたキャラクターの二面性と感情の起伏の激しさを、ヴィン・ディーゼルはいつもながら巧みに演じていると思う。

 問題なのは、彼の周囲にいる人間たちがワルに見えないことだ。幼なじみでもある同僚デメトリウスはまるで優等生だし、ストリート・ギャングのセクシーも人の良さそうなデブでしかない。このふたりがもっと凶悪そうな面構えをしていると、この映画の迫力はもっと増したと思う。デメトリウスがとっさに犯罪の隠蔽工作をしてのけるとか、上司の許可なしに勝手に捜査を進めてしまうといった描写も、彼がもっと図太そうな顔をしていることで引き立っただろう。この映画ではデメトリウス役のラレンズ・テイトがショーンに無理矢理引っ張られて、嫌々ながら彼に協力しているように見えてしまう。

 ディアブロの正体は誰なのか?というミステリーが物語を引っ張るが、その正体や目的をショーンがすべて悟る場面はなかなかうまい。こういうシーンがきれいに決まらないと、こうした映画は気の抜けたものになってしまう。映画前半で感じた「なぜ?」という小さな引っかかりも、この種明かしのシーンですべてがきれいに解決する。スター俳優が出演したB級映画としては、まずまずの水準に達している映画だろう。最後のオチもきれいに決まっている。蛇足だが、『ブルドッグ』という邦題は内容にマッチしていると思う。

(原題:A MAN APART)

11月15日公開予定 東劇他・全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス、松竹
(2003年|1時間49分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.bulldog-jp.com/

DVD:ブルドッグ
輸入ビデオ:A MAN APART
関連CD:Nothing To Lose: Music inspired by A Man Apart
関連DVD:F・ゲイリー・グレイ監督
関連DVD:ヴィン・ディーゼル
関連DVD:ラレンズ・テイト

ホームページ

ホームページへ