ロボコン

2003/10/01 シャンテ・シネ3
理数系の甲子園ことロボット・コンテストがモチーフの青春映画。
映画のネライは悪くないが、作品には力がない。by K. Hattori

 高等専門学校の生徒たちが手製のロボット同士を戦わせる「アイデア対決・高等専門学校ロボットコンテスト」は、1988年に第1回大会が開かれ現在まで続く“理数系の甲子園”。毎年NHKが番組を作って大会の様子を放送しているので、テレビで見たことがある人も多いと思う。この映画はそのロボットコンテスト、略して「ロボコン」を舞台にした青春ドラマ。監督・脚本は『この窓は君のもの』『まぶだち』の古厩智之で、これが初のメジャー進出作になる。主演は第5回東宝シンデレラ・グランプリ受賞の長澤まさみ。映画の中では彼女が紅一点で、共演には小栗旬、伊藤淳史、塚本高史など、最近売り出し中の若手俳優が顔をそろえている。

 この映画は「ロボコン」という技術系の大会を、スポ根ドラマの手法でドラマチックに描こうという、ただそれだけのアイデアで作られている作品だ。脚本は物の見事にスポーツ根性ドラマの定石をなぞっている。才能を秘めながらも無為な青春を送っている主人公が、学校内からも冷笑されている弱小クラブに入る。そこに集まるのはエリートクラスから落ちこぼれた変人ばかり。まったくやる気のないクラブの面々は、主人公の入部によって少しずつやる気を出し始め、やがてチームは一丸となって全国大会を勝ち進んでいく。最初の大会でこてんぱんに負けて奮起するとか、エリートチームから侮辱されて悔しがるとか、合宿に行ってチームがひとつにまとまるとか、話の流れは完全に決まり切った路線。

 チームのメンバーも、父子家庭に育ってひとりで熱血しはじめるヒロイン、天才肌だが協調性ゼロの設計担当、情報収集マニアながら統率力皆無の部長、技術はピカイチなのにチームに幻滅してやる気を失っている組み立て担当など、キャラクターのポジショニングとしては間違いのない布陣となっている。ライバルチームの部長や、主人公の父親、チームを率いる顧問の教師など、周囲の人物も面白い。しかしこの映画、そこまでなのだ。ここまで駒を並べてあるのに、それがうまく動いていない。物語やキャラクターの骨組みはそれほど悪くないのに、そこにうまく肉付けできていない。

 スポ根ドラマは骨組みだけではダメなのだ。スポ根に必要なのは「血と汗と涙」であり、物語やキャラクターの骨組みは、「血と汗と涙」を盛り込むための下地に過ぎない。それなのにこの映画は、下地を作るだけで7,8割は満足してしまっているように思える。これは間違いなのだ。スポ根のストーリーラインなど、モチーフになる競技さえ決まればあとは半ば自動的に作れてしまうのだから。

 この映画は盤面に駒を並べてあるだけだ。その駒が実際に動き回る様子を見せるのがドラマなのに、この映画は並べた駒だけを見せて勝負は終わったと思っている。この映画に感心したり感動したりする人もいるとは思うが、僕はまるで感心できなかった。

9月13日公開 シャンテ・シネ他・全国東宝洋画系
配給:東宝
(2003年|1時間58分|日本)
ホームページ:
http://www.robocon-movie.com/

DVD:ロボコン
サントラCD:ロボコン
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