マッチスティック・メン

2003/09/19 ワーナー映画試写室
ニコラス・ケイジが潔癖症の詐欺師を演じるコメディ映画。
主人公の娘を演じたアリソン・ローマンが上手い。by K. Hattori

 一時の不調もなんのその、最近は『グラディエーター』『ブラックホーク・ダウン』『ハンニバル』とヒット作を連打しているリドリー・スコットの新作は、潔癖症の詐欺師を主人公にしたコメディだ。主人公ロンはグリフター(知能犯罪者)稼業何十年のベテラン詐欺師。若い相棒フランクと組んで確実に仕事をこなす腕の良さだが、病的な潔癖症で時折パニック発作を起こすことがある。フランクの紹介でカウンセリングを受け始めたロンは、自分が10数年前に追い出した恋人のことを、今でも気にかけていることを突き止められてしまう。カウンセラー経由で昔の恋人に連絡を取ったところ、なんと14歳になる娘アンジェラが「お父さんに会いたい!」と言い出した。娘は夏休みをロンと過ごすことになり、ロンは戸惑いながらもこの状況に心地よさを感じ始めるのだった……。

 主人公のロンを演じるのはニコラス・ケイジ。相棒フランクを演じるのはサム・ロックウェル。『ホワイト・オランダー』で素晴らしい演技を見せたアリソン・ローマンが、主人公の娘アンジェラを演じている。詐欺師と娘の関係はピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ペーパー・ムーン』を連想させるが、これは作り手も十分に意識している。もちろん詐欺師映画の古典『スティング』も同様だ。映画終盤のあっと驚くトリックはコン・ゲームでは古典的な手口だが、これは『スティング』にも登場したトリックの応用編と言えるだろう。それにしても鮮やか。映画を観ているこちらまで、きれいに騙されました。

 エリック・ガルシアの同名小説を脚色したものだが、これは脚本がよくできていると思う。小さな台詞やエピソードまでが、すべて映画の終盤に至る複線になっている。よく練られた緻密なシナリオなのだ。主役3人の演技も素晴らしい。ニコラス・ケイジは感情の起伏が激しいロンを大げさに演じて笑いを誘い、サム・ロックウェルも曲者ぶりを発揮。そして何と言っても、アリソン・ローマンの素晴らしさ。彼女は『ホワイト・オランダー』でも大女優たちを相手に一歩も引かぬ芝居を見せていたが、今回もそれに負けない密度の濃い芝居で観るものを唸らせるはずだ。この若い女優の実力は本物です。

 リドリー・スコットの映画にしては映像的に凝った所がなく、全体の印象としてはごくごく普通の映画になっている。「これぞリドリー・スコットの世界じゃ〜!」という興奮はまったくない。だがこれは『テルマ&ルイーズ』も同じだった。コミカルでテンポよく物語が進み、終盤は悲劇になるというのも同じ。ただしこの『マッチスティック・メン』は悲劇を通り過ぎて、最後の最後はハッピーエンディングになる。観ていてもそれが嬉しいのだ。

 コン・ゲームの映画はストーリーについてあまり詳しく紹介することができないのだが、トリックの巧みさという意味では『スティング』に匹敵する作品だと思う。

(原題:Matchstick Men)

10月4日公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2003年|1時間56分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.matchstick-men.jp/

DVD:マッチスティック・メン
サントラCD:Matchstick Men (From US)
サントラCD:Matchstick Men (From UK)
原作:マッチスティック・メン(エリック・ガルシア)
原作洋書:Matchstick Men (Eric Garcia)
関連DVD:リドリー・スコット監督
関連DVD:ニコラス・ケイジ
関連DVD:サム・ロックウェル
関連DVD:アリソン・ローマン
参考図書:詐欺師入門(デヴィッド・W・モラー)

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