フェリーニ
〜大いなる嘘つき〜

2003/09/09 映画美学校第1試写室
「フェリーニ映画祭」にあわせて上映されるドキュメンタリー映画。
フェリーニ最晩年のインタビューが中心。by K. Hattori

 東京国際映画祭の協賛企画「フェデリコ・フェリーニ映画祭」で上映される、フェリーニ監督のインタビューを中心とするドキュメンタリー映画。フェリーニは1920年に生まれて、1993年に亡くなっている。今回の「フェリーニ映画祭」は、監督の没後10年を記念する企画というわけだ。『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』は監督がなくなる直前の91年夏から92年にかけて撮影が行われ、2000年になってから関係者のインタビューを追加撮影して完成させたものだという。

 ベースになっているのはフェリーニ監督のインタビューだが、これは特定の作品やテーマについて語ったものではないようで、話題はあちこちにフラフラとさまよって一貫性はあまりない。しかしそれが逆に、フェリーニという映画作家の多面的な姿を浮かび上がらせることにもなっている。ロケ撮影よりスタジオでの人工的な世界を好み、生まれ故郷の本物の町より、映画の中で再現した町の方が自分にとって本物だと言ってしまうフェリーニ。自由奔放なイマジネーションの渦に観客を巻き込み、ほとんど即興で映画を作っているのではないかと思われる彼が、じつは脚本作りにかなりの時間をかけて緻密な本を作っていたというのも面白いエピソードだと思った。共同脚本家として完璧なシナリオを作り、映画作家としてそれをぶっ壊していくというのがフェリーニのスタイルだったようだ。

 フェリーニゆかりの人物として、本当ならジュリエッタ・マシーナやマルチェロ・マストロヤンニのインタビューが欲しい所だが、この映画にはそれがない。おそらくフェリーニにインタビュー取材している段階では、これを1本の映画に仕上げる気がなかったか、監督の死によって製作が一時ストップしていたのだろう。その間にマシーナもマストロヤンニも亡くなってしまい、この映画ではオムニバス映画『世にも怪奇な物語』のフェリーニ編『悪魔の首飾り』に主演したテレンス・スタンプ、『カサノバ』に主演したドナルド・サザーランド、『ボイス・オブ・ムーン』のロベルト・ベニーニらが、撮影現場でのフェリーニ演出について役者の立場から証言している。

 小津安二郎が自分のイメージを映像化するため、きわめて厳格に役者に指示を出していたのは有名だが、フェリーニもそれはまったく同じだったようだ。俳優の一挙手一投足にや台詞のタイミングについて、きわめて明確なビジョンを持ち、それを俳優に強要する。そのためフェリーニと初めて仕事をする俳優は面食らい、自分なりの演技プランを持っている俳優は監督と衝突を繰り返すことになる。ドナルド・サザーランドが監督と衝突した話や、テレンス・スタンプが監督の演技指導を求めて大変な目にあった話には思わずニヤニヤ笑ってしまった。世界的な大監督というのは、やはり変わり者が多いようです。そうでなきゃ、映画作家にはなれないよなぁ……。

(原題:Fellini: Je suis un grand menteur)

11月1日〜14日上映予定 シアター・イメージフォーラム
「フェデリコ・フェリーニ映画祭」
第16回東京国際映画祭 協賛企画
配給:ザジフィルムズ
(2002年|1時間45分|フランス、イタリア、イギリス)
ホームページ:
http://www.zaziefilms.com/fellini/

DVD:フェリーニ〜大いなる嘘つき〜
関連書籍:I'm a Born Liar: A Fellini Lexicon
関連DVD:フェデリコ・フェリーニ監督
関連書籍:フェデリコ・フェリーニ
関連書籍:Federico Fellini

ホームページ

ホームページへ