ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

2003/09/05 シャンテ・シネ2
レイプ殺人の死刑囚デビッド・ゲイルが秘めた真実とは……。
問題提起のしかたが間違っていると思うなぁ。by K. Hattori

 ニュース雑誌の女性記者ビッツィーは、レイプ殺人で死刑判決を受けた囚人をインタビュー取材することになった。男の名はデビッド・ゲイル。もともとは大学で哲学の教鞭をとっていたインテリで、皮肉なことに彼と被害者の女性は、長年死刑廃止運動に携わってきた運動家だった。「罪を犯したなら死刑でも当然」と考えていたビッツィーだったが、処刑まであと数日に迫ったデビッドを取材するうち、彼の実直だが不器用な人柄に引き付けられ、彼が死刑に値する罪を犯した男とは思えなくなってくる。事件の周辺を独自に取材し始めたビッツィーのもとに、突然1本のビデオテープが送り付けられてくる。はたしてデビッドは本当に罪を犯したのか? それとも無実の罪で処刑されそうになっているのか? やがてビッツィーは、事件の裏にある衝撃的な事実を知ることになる……。

 タイトルロールのデビッド・ゲイルを演じているのは、ハリウッド随一のクセモノ役者ケビン・スペイシー。こうなるとこの映画は、単に「死刑囚の冤罪を晴らす」というだけの話でないことが最初からわかってしまう。デビッドの話には何か裏がある。彼の話にはどこかウソがある。彼がレイプ殺人犯だとは思わないが、かといって事件にまったく関与していないとも思えない。観客のほとんどはそんな疑惑の目で、この映画を観るのではないだろうか。話としてはなかなかよくできていると思うのだが、ケビン・スペイシーというキャスティングが観客に与える疑惑の芽をどこかで摘み取るか、芽生えている疑惑を逆手にとって観客を二重に欺くなどの工夫がほしかったようにも思う。

 デビッド・ゲイル逮捕以来6年間を獄中で過ごしているという設定だ。この6年という歳月をもっと強調すれば、映画の最後のドンデン返しももっと生きたように思う。デビッド・ゲイルの強い信念も、彼が示した家族への強い愛も、仲間たちとの深い信頼関係も、6年という時間経過をよりリアルな時間として描くことで強調されたはずだし、この時間経過という重みによって、観客もまんまと騙されると思う。長い獄中での生活によって、デビッド・ゲイルの人格に大きな変化が現れたということで、ケビン・スペイシーという役者の貫禄も生きてくると思うのだが……。

 アメリカ国内における死刑廃止論争を扱った映画だが、死刑の是非という肝心の点について、この映画がわざと焦点を当てずに逃げているような印象も受けた。ヒロインのビッツィーは死刑容認論者として映画に登場してくるのだが、彼女はデビッド・ゲイルのインタビューを通して彼の無実を確信するようになる。彼女は「ゲイルを殺してはならない!」と確信したはずだ。でもそれが「あらゆる死刑囚は殺されるべきでない」という死刑廃止論に結びついたかというと、それはまた別の問題だと思う。死刑廃止論は「冤罪の可能性」とはまったく別種の思想であろう。この映画はそこがチグハグだ。

(原題:The Life of David Gale)

7月26日公開 シャンテ・シネ他・全国洋画系
配給:UIP
(2003年|2時間11分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.uipjapan.com/davidgale/

DVD:ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
サントラCD:ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
サントラCD:The Life of David Gale
ノベライズ:ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
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ノベライズ:The Life of David Gale
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