KEN PARK

2003/07/30 映画美学校第2試写室
『KIDS』の監督・脚本コンビが再び作ったティーンエイジ映画。
10代の少年少女が危なっかしいのは万国共通。by K. Hattori

 『KIDS』の監督ラリー・クラークと脚本を書いたハーモニー・コリンが、7年ぶりにコンビを組んで作ったキッズムービー。今回は撮影を担当したエド・ラックマン(『エリン・ブロコビッチ』や『エデンより彼方に』の撮影監督)が、共同監督としてクレジットされている。話題を呼んだ『KIDS』以降、クラーク監督は『アナザー・デイ・イン・パラダイス』や『ブリー』などの映画を撮っているし、コリンも監督デビューして『ガンモ』や『ジュリアン』という作品を作っている。こうしてそれぞれの道を歩んできたふたりが、再び合流してどんな映画を作るのか……というのが、今回の見どころだ。

 『KIDS』は文字通り「子供たち」が完全に主役で大人の影が薄い映画だったが、今回の映画は「子供と大人」の関係が大きなモチーフになっている。特に子供と親、もしくは保護者との関係だ。物語の舞台はカリフォルニア州のヴァイセリアという小さな町。主人公はそこで暮らす5人のティーンエイジャーで、それぞれに顔見知りではあるけれど、それほど親しい間柄ではないらしい。タイトルにもなっているケン・パーク(人名です)の自殺を皮切りに、4人の登場人物たちの物語が相互に接点を持たないまま同時進行していく構成。映画は最後に、再びケン・パークの姿を映し出して終わる。

 ここで描かれているのは、平凡な中流家庭が秘めるドロドロとした薄気味悪さだ。祖父母と生活しているテートの薄気味悪い性癖。父親と折り合いが悪いクロードの悩み。父子家庭で育つピーチーズの父娘関係はどこかしら近親相姦的なニオイを漂わせる。ショーンは同級生のガールフレンドとその母親の両方と寝ている。日常の裂け目から、見てはいけない何かを覗き込んでしまったような感覚。誰もが隠しておきたい日常の中の秘密を、こっそりと隠しカメラで撮影しているような、不道徳で後ろめたい気持ちにさせられるエピソードの数々。どの家庭も、おそらく表面的には「ごく普通の家庭」なのだろう。でもその根元が病んでいる。

 この映画は「どの家庭も多かれ少なかれ病んでいるのだ」と言いたげだ。健康な家庭などどこにもない。問題を抱えていない家庭などどこにもない。ほんの少し何かがズレたり狂ったりするだけで、どこにでもある平凡でごく普通の家庭が、阿鼻叫喚の修羅へと滑り落ちてゆく。映画の中にはケン・パークの日常だけが描かれていないのだが、おそらく彼の家庭生活も、表面的には取るに足らない平凡さで埋め尽くされていたに違いない。

 これはアメリカだけの現象なのだろうか? おそらく日本でも、似たような状況になっていると考えたほうがいい。ティーンエイジャーの息子や娘を持つ父親や母親たちは、この映画を観ると心穏やかでいられないだろう。もし「うちは平気」と言い切れるとしたら、それはよほど鈍感なのだ。現実はこんなものさ。

(原題:KEN PARK)

秋公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:クライドフィルムズ 宣伝協力:メディアスーツ、クライドフィルムズ
(2002年|1時間36分|アメリカ、オランダ、フランス)
ホームページ:
http://www.clydefilms.co.jp/

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