恋愛寫眞
〈レンアイシャシン〉

2003/07/02 丸の内シャンゼリゼ
広末涼子と松田龍平が主演の青春ラブストーリー。
堤幸彦監督作だが、オチャラケ度は低い。by K. Hattori

 貧乏カメラマンの瀬川誠人は、学生時代に付き合っていた恋人・里中静流から1通のエアメールを受け取る。それはニューヨークでカメラマンの仕事を始めた静流が、初の個展を開くという知らせだった。自分と静流の間にできた大きな溝を痛感し、暗澹とした気持ちになる誠人。だがその直後に、誠人は昔のクラスメートから奇妙な話を聞かされる。「サトナカシズル」という若い日本人女性が、1年前にニューヨークで殺されたというのだ。「サトナカシズル」は「里中静流」と同じ人物なのか? だとしたら静流から届いた手紙は何なんだ? 誠人は居ても立ってもいられぬ気持ちで、ひとりニューヨークに向かう。彼はわずかな写真を手がかりにして、静流の暮らすアパートを見つけ出すのだが……。

 『溺れる魚』や『トリック−劇場版−』の堤幸彦監督が、広末涼子と松田龍平主演で撮ったラブストーリー。大学時代の恋人同士が些細な感情のすれ違いから卒業と同時に別れてしまうが、社会に出て数年後、再び自分の気持ちに気が付いて……というお決まりのお話。しかしこの映画はそんな定番中の定番ストーリーに、ミステリーの風味を効かせて観客に突きつける。世界中から注目される新進気鋭のカメラマンの瀬川誠人は、なぜ「里中静流」という女性の名前で活動しているのか? ニューヨークで死んだ日本人女性・サトナカシズルは、はたして誠人の恋人だった里中静流と同一人物なのか? 知り合いが誰も居ないニューヨークで、誠人はどうやって静流を探すのか? 静流が予約したというギャラリーはどこにあるのか? そして、誠人と静流は再会することができるのか?

 タイトルの『恋愛寫眞』は、「寫眞(写真)」の2文字が旧字体になっているのがいい。今や写真といえばデジタル全盛。プロのカメラマンでもほとんどがデジタル撮影になっている。だが誠人や静流が持っているのは、昔ながらのアナログ・カメラ。ピントも巻き上げもシャッターも露出もマニュアルの、ごつくて重たい一眼レフカメラだ。それも世界のプロが愛用するニコンをあえて避け、キヤノンのF-1(81年発売のNew F-1だろう)という機種選択になっているのが渋い! 映画の中では広末・松田のカップルが、このごっついカメラを抱えて、猛烈な勢いで写真を撮りまくる。劇中で撮った写真が、そのまま劇中にスチルとして挿入されると、その瞬間に登場人物の目と観客の目が重なり合う。

 堤幸彦監督は表現において無数の引き出しを持っている人だし、この映画でもそうしたテクニシャンぶりは存分に発揮されている。ストレートなラブストーリーは、ミステリー仕立ての脚本と、大技小技が入り乱れる堤演出で2,3回ひねりを加えられている。しかしいつもはうるさくも思える堤演出が、今回は見事に感動を刺激するツボにはまった。チョコマカした雰囲気にならず、最後はきれいに着地するのは見事だ!

6月14日公開 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:松竹
(2003年|1時間51分|日本)
ホームページ:
http://www.c-o-o-l.jp/

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