撃鉄 GEKITETZ
ワルシャワの標的

2003/05/07 ソニー・ピクチャーズ試写室
スティーブン・セガールの映画はハズレが多すぎる。これは大ハズレ。
もうちょっとマシな脚本家や監督と組めばいいのに。by K. Hattori

 スティーブン・セガール扮するフリーランスの諜報員ジョナサン・コールドは、長年馴染みのマルケという男から、ひとつの小包をパリに運ぶよう依頼される。マルケは「簡単な仕事だ」と言うのだが、一緒に現場に向かったデュノワという男が食わせ物だった。この男はマルケの商売敵であるオリファントとつながり、小包を横取りしてジョナサンも消そうとしたのだ。裏切りを知ったマルケはデュノワを殺そうとするが、逆に殺されてしまう。荷物の受取人はヨーロッパでも有数の大富豪ヴァン・エイカン。だがその荷物を、エイカンの妻であるメレディスが奪おうとするのだった……。

 基本的には「謎の小包の争奪戦」という在り来たりな話なのだが、それがどうしてこれほどわかりにくい複雑な話になってしまうのかが謎。登場人物が多すぎるわけではない。話がことさら入り組んでいるわけではない。でもこれほどにわからなくなってしまうのは、さほど重要ではない登場人物たちが、必要以上に自分の存在をアピールしてしまうからだろう。こんな映画はジョナサンとデュノワの対立を中心にして、あとはみんな「その他大勢」で構わないのだ。オリファントもミムズもデンマーク人も、みんな不要。あるいはもっと軽く小さな扱いで構わない。ジョナサンと家族の話もまったく不要。

 小包の中身を映画の終盤まで明かさないという、脚本構成上の問題もある。小包の中身は映画の中盤では明らかにし、それがまた新たな謎を生んでいくという構成にした方が物語はスムーズに流れるし、映画全体のテンポもずっとよくなったと思う。包みの中を明らかにすれば、ジョナサンがメレディスを助ける動機付けにもなる。場所が次々移動していくのも、物語を弛緩させてしまっていないだろうか。パリならパリというひとつの場所で、じっくりとドラマを練り上げたほうが緊張感が生まれると思うのだけれど。

 ひょっとするとこの映画を作った人たちは、ガイ・リッチーの『ロック、ストック&トゥースモーキング・バレルズ』や『スナッチ』のような作品を目指したのかもしれない。小さな荷物をめぐる争奪戦に個性的な面構えの男たちが大勢参戦して、ばたばたと人が死んでいくという構成はまるでそっくりではないか。もしそうだとすれば、主演がスティーブン・セガールというキャスティングは大失敗。これでは他の顔ぶれとの釣り合いが取れず、映画全体のバランスを崩してしまう。セガールを登場させるなら、数シーンに登場してすぐ殺されてしまうような役にしなくちゃね。

 もっともこの監督の演出力では、ガイ・リッチーを目指そうとしても最初から無理だったかも。不必要なクレーン撮影や、意味不明のカット割りなどが頻発するのも疑問。セガールの出演作には『沈黙のテロリスト』というハチャメチャな駄作があったけれど、この映画にはそれと同じニオイが感じられるなぁ……。

(原題:The Foreigner)

2003年5月24日公開予定 シネマメディアージュ他・全国洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(2002年|1時間35分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/seagal/

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DVD:撃鉄GEKITETZ/ワルシャワの標的
関連DVD:マイケル・オブロウィッツ監督
関連DVD:スティーヴン・セガール (2)

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