アメリカン・アウトロー

2003/05/01 TCC試写室
西部のロビン・フッドと呼ばれたジェシー・ジェームズの伝説を映画化。
コリン・ファレルが主人公ジェシーを爽やかに演じている。by K. Hattori

 南北戦争後の中西部で、銀行・列車・駅馬車などを次々に襲って勇名をとどろかせた無法者、ジェシー・ジェームズの半生を描いた西部劇。ジェシーを主人公にした映画はこれまでに何本も作られているが、この映画はジェシーと兄フランクのジェームズ兄弟と、コール、ボブ、ジムのヤンガー兄弟を中心とした、兄弟愛と友情の物語に仕立てている。物語は実在したジェシーや仲間たちのエピソードを比較的自由に再構成し、ジェシーと鉄道会社の戦いというストーリーの軸を明確にした。

 ミズーリー州の農場から兄フランクと一緒に南軍のゲリラ部隊に参加したジェシーは、戦争が終わって仲間たちと共に故郷リバティの町に戻ってくる。だが彼らがそこで見たのは、南軍参加者に対する北軍兵士の公開処刑と、鉄道会社による強引な農地の買い上げだった。町の人々は農地の売却を拒絶するが、鉄道会社は暴力を使って農民に圧力をかけ、それでも逆らう農家がいると、納屋や家に火を放ったり爆弾を放り込んだりした。ジェシーたちの家も鉄道会社が雇った男たちに襲われ、母親は命を落としてしまう。こうなったら鉄道会社相手に戦いを挑むしかない。鉄道会社が利用している銀行を襲って資金を奪い、鉄道や駅馬車のルートを寸断して徹底的に鉄道建設を妨害するのがジェシーたちの作戦だ。

 この映画ではジェシーたちの行動が、農民としての権利を守るための正当な戦いとして描かれる。奪った大金に大喜びし、遊蕩をつくすシーンなどもあるにはあるが、ジェシーはいつでも正しい判断力を持ち、リーダーとして仲間たちをまとめ上げる。ジェシーを演じているのは『マイノリティ・リポート』や『デアデビル』のコリン・ファレル。しかしこれはいささか、きれい事すぎるようにも感じた。ジェシーたちの当初の動機が、鉄道会社への妨害や復讐という正当なものだったとしても、暴力で金を奪うという行動を繰り返していれば、徐々に生活はすさんでくるように思う。少なくともそれば僕の考えるリアリズムだ。もしも「ジェシーは最後まで正義の味方だった」とするならば、彼の関わった強盗事件をもっとスマートでスタイリッシュなものとして描く工夫が欲しかった。

 実像に近いジェシー・ジェームズ映画が観たいなら、ウォルター・ヒルの『ロング・ライダーズ』を観ればいい。『アメリカン・アウトロー』は「ジェシー・ジェームズ伝説」をきれい事で塗り固め、アクションたっぷりの明朗快活な青春群像として描こうとした作品なのだろう。危険を前ににやりと笑うジェシー。弟を立てながらグループの調整役に徹するフランク。時に身を挺してジェシーを守るジー・ミムズ。どのキャラクターは魅力がある。ただしそれが、映画の中でうまく噛み合っていないような気がして残念だ。宿敵アラン・ピンカートンも、ティモシー・ダルトンが演じた割には中途半端な人物になっている。

(原題:American Outlaws)

2003年6月28日公開予定 キネカ大森
配給:ツイン
(2001年|1時間35分|アメリカ)
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DVD:アメリカン・アウトロー
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