ザ・コア

2003/04/25 GAGA試写室
地球内部のコアが止まって人類は滅亡の危機に……。
ひどく幼稚なストーリー展開に白けてしまう。by K. Hattori

 世界各地で大きな異変がおき始めていた。マサチューセッツ州ボストンで起きた、ペースメーカー使用者の集団突然死事件。ロンドンのトラファルガー広場では、鳩たちが人間を襲う事件が発生。スペースシャトルのエンデバー号は管制誘導装置の異常で、ロサンゼルス市のど真ん中に不時着する。シカゴ大学の地球物理学教授ジョシュ・キーズは、一連の事件の原因が地球内部の異常にあることを突き止める。地球全体を覆う巨大な磁場の発生装置であるコア(核)が、なぜか運動を止めてしまったのだ。地球の磁場は宇宙からの電磁波を防ぐ役割をしていたが、それが消えてしまえば人間も含む地上の生物はすべて滅んでしまう。人類滅亡まで、残された時間はわずか1年。アメリカ政府は極秘裏に国中の頭脳を集め、コアを再び始動させるための巨大プロジェクトをスタートさせる。

 大ヒット作『アルマゲドン』の地底版となるSF大作。実際のシャトル事故の直後に、シャトル不時着シーンが含まれた予告編の上映が自粛されたという話題作だ。主演は『抱擁』のアーロン・エッカートとヒラリー・スワンク。他にデルロイ・リンド、スタンリー・トゥッチ、チェッキー・カリョ、ブルース・グリーンウッドなどが出演し、それなりに顔ぶれの豪華さを出している。ただしこの映画、脚本がまるっきり駄目だと思う。映画なんてしょせんは嘘っぱちだから、何をどう描こうと勝手なんだけれど、それにしたって多少は観客にリアリティを感じさせる工夫がないと、観客はなんだか馬鹿にされたように感じてしまう。

 コアを再始動させるために、特殊な装置で地球中心部まで穴を掘っていくという設定自体がそもそも荒唐無稽なのだが、これは物語を成立させるために必要な必要最低限のウソとしてとりあえず許容してもいい。でもこうした大きなウソを成立させるには、その周りをもっともらしいデータやエピソードで埋め尽くし、「確かにそれがアリなら、こっちもアリかもなぁ」と一瞬でも観客をその気にさせなければならない。でもこの映画は、ウソの周囲に見え透いたウソを並べ立てるだけ。観ていてもずっと白けてしまって、少しも物語を親身に感じることができない。

 とにかく突っ込みどころが満載の映画なのだ。コア再始動という人類の存亡をかけたプロジェクトに、バックアップチームが存在しないという不備。地下数千キロの地点にある空洞内部が、どういうわけか1気圧に保たれているという偶然。サンフランシスコ市の半分を焼き尽くすほどの電磁波が地上に直接降り注いでいるというのに、コンピュータネットワークはすべて無傷で残っているという不思議。ああ、不可解なことが多すぎる!

 一番面白かったのは市街地上空を飛ぶスペースシャトルの映像と、人々を襲う鳥の群れ。この技術を使ってヒッチコックの『鳥』を最初のプランどおりにリメイクしたら、さぞや面白くなるだろう。

(原題:THE CORE)

2003年6月公開予定 日劇1他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2003年|2時間14分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.thecore.jp/

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