アンダー・サスピション

2003/04/17 松竹試写室
幼女レイプ殺人の容疑者が警察の尋問で追い詰められる。
ジーン・ハックマンとモーガン・フリーマン主演。by K. Hattori

 プエルトリコの港町サンファン。公現日のお祭りで賑わう町の警察署に、一人の男が呼び出される。彼は前日の朝レイプ殺人の犠牲になった少女の遺体を最初に見つけた、アメリカ人の弁護士ヘンリー・ハーストだ。前日の事情聴取の不明点について、再度詳しい話を聞かせてほしいという警察署長。だが彼がハーストを犯人と疑っていることは明らかだった。署長や刑事たちの尋問を前にして、くるくると変わるハーストの証言。ハースト本人が言うように、これは単なる記憶違いなのか? それとも彼は何かを隠している? 彼は2件目の事件の第一発見者であるだけでなく、最初に少女が殺された日にも事件現場をうろついていた。これは単なる偶然なのか? やがて刑事たちが暴露するのは、ハーストの秘密の私生活。彼はおよそ「町の名士」に相応しくない、いかがわしい行為に耽溺していたのだ。刑事たちの執拗な質問攻めの前に、ハーストは犯行を自供するのか?

 '81年に製作された日本未公開のフランス映画『レイプ殺人事件』を、『ロスト・イン・スペース』のスティーヴン・ホプキンス監督がリメイクしたミステリー映画。大物弁護士ヘンリー・ハーストを演じるのはジーン・ハックマン。警察署長のビクター・ベネゼー役にモーガン・フリーマン。このふたりは製作総指揮も兼務している。ハーストの美しい妻シャンタル役にはモニカ・ベルッチ。自信過剰気味の若い刑事フェリックス・オーエンス役で『ドリームキャッチャー』のトーマス・ジェーンが出演している。

 基本的に警察署の内部だけで進行する作品で、このまま舞台劇になりそうな内容の濃い芝居が展開する。映画の導入部では事件の詳細が映画を観る側にはまったく告げられず、証言を整理したりアリバイを検証する過程で少しずつ事件の全体像が明らかになってくるという構成は見事。映画前半で事件の概略提示、映画中盤でハーストの証言や警察の捜査に基づいた争点の整理、映画終盤ではマジックミラー越しに行われるハーストとシャルダンの対決という流れ。ただしこの映画はこの流れの全体を「ハースト対ベネゼー署長」という対決軸で描き出そうとして、映画終盤の「ハースト対シャンタル」という家庭内対立の悲劇の味が薄くなってしまったようにも思う。

 フリーマンが製作総指揮を買って出ていることからも、彼がこの役に対して並々ならぬ意欲を見せていることがわかる。しかしここでは彼がもう少し硬質に、融通の利かない警察官を演じてみせたほうが効果的だった用に思う。この映画の中心は、やはり「ハースト対シャンタル」にあるのだ。警察の捜査や尋問は、秘められていた夫婦関係の破局を明らかにする装置に徹すべきではなかったか。物わかりのよさそうな警察署長が、一皮剥くと非人間的な「権力による暴力装置」としての姿を露呈する。個性を持ったひとりの人間も、ある役割の中では別人になってしまう恐さ!

(原題:UNDER SUSPICION)

2003年6月14日公開予定 銀座シネパトス、新宿ジョイシネマ3
配給:エスピーオー
(2000年|1時間50分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.cinemart.co.jp/undersuspicion/

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DVD:アンダー・サスピション
サントラCD:アンダー・サスピション
サントラCD:UNDER SUSPICION

原作洋書:Brainwash (John Wainwright)
オリジナル版DVD:レイプ殺人事件
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