バンガー・シスターズ

2003/04/17 メディアボックス試写室
ゴールディ・ホーンとスーザン・サランドン初共演のコメディ映画だが……。
脚本のまとまりが悪い。特に映画後半はひどいなぁ。by K. Hattori

 '60年代末から'70年代にかけて、イケイケのグルーピーとして大物ミュージシャンたちを総なめにしていた「バンガー・シスターズ」ことスゼットとヴィニー。今でもロサンゼルスの小さなライブハウスで「生きる伝説」として一部の客や店員から一目置かれていたスゼットだが、代替わりした若い店長は彼女をあっさりクビにしてしまう。ここでスゼットが思い出したのは、かつての盟友ヴィニーのこと。彼女も今じゃアリゾナのフェニックスで、弁護士夫人として優雅に暮らしているらしい。だが今ではすっかり過去を捨てて地域の名士になったヴィニーにとって、スゼットの出現は悪夢そのものだった!

 主演はゴールディ・ホーンとスーザン・サランドン。ロックスターとグルーピーの映画としては『あの頃ペニー・レインと』がすぐに思い出されるけれど、ホーンはその映画に主演したケイト・ハドソンのじつの母。かくしてこの映画は、『あの頃ペニー・レインと』の後日談のようなお話になっている。20年以上前にロックスターに群がっていた少女たちは、いったい今どこで何をしているのだろう。スゼットのように今も昔の夢の端っこをつかんだまま生きているのだろうか。それともヴィニーのように、過去の自分の生き方と決別した新しい人生に満足しているのだろうか。

 監督は脚本家出身のボブ・ドルマンで、これが監督デビュー作だという。対照的な生き方を選んだ元グルーピーに、ハリウッドで挫折した中年脚本家という取り合わせはそれなりに面白いが、物語のエンジンがかかる前に映画が終わってしまったという印象は否めない。ヴィニーはスゼットの登場がきっかけで上品ぶった仮面を脱ぎ捨て、再びバンガー・シスターズとしての生き方を思い出すのだが、そのきっかけが書き込み不足だろうと思う。彼女はかつての生活をなぜ捨てたのか。彼女は弁護士夫人として今の生活に、どんな不満があったのか。また娘たちはスゼットや母の姿から何を見出し、何を学び取ったのか。ヴィニーの夫は妻が元グルーピーだと知って、どんな気持ちだったのか。

 この映画は本来ドラマの核にしなければならない部分をすっ飛ばして、どうでもいい脇道に迷い込んでしまった。ジェフリー・ラッシュ演じる脚本家は狂言回しにして、スゼットとヴィニーの衝突にもっとドラマのフォーカスを合わせるべきだった。自分の過去と向き合わねばならなくなったヴィニーと家族の葛藤を、もっと丁寧に描くべきだった。

 中年脚本家が「父親を殺したい」と言っているのは、「過去を殺して自由になりたい」という欲求に他ならない。だがこの映画は「過去は葬れない」「我々は過去と一緒に生きていくのだ」という着地点を用意する。中年脚本かもヴィニーも、スゼットと出会って自分の過去と共に生きる勇気を得る。話の流れはこれでいいけど、エピソード不足でいささか都合がいいお話に見えてしまう。

(原題:The Banger Sisters)

2003年5月31日公開予定 銀座シネパトス
配給:20世紀フォックス 宣伝:メディアボックス
(2002年|1時間40分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.cine-tre.com/banger/

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DVD:バンガー・シスターズ
サントラCD:The Banger Sisters
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