NARC
ナーク

2003/04/17 UIP試写室
映画冒頭から物語に強く引き込まれる傑作刑事ドラマ。
レイ・リオッタとジェイソン・パトリックが好演している。by K. Hattori

 デトロイト警察麻薬課の潜入捜査官ニック・テリスは、犯人追跡中に民間人を巻き込んでしまったことから減俸休職処分となる。それから1年半後。署内の査問会で彼の復職条件として突きつけられたのは、2ヶ月前に起きた別の潜入捜査官射殺事件の捜査に加わることだった。妻の反対にも関わらず、ニックは殺されたマイク・カルベス捜査官の元相棒ヘンリー・オークと共に犯人探しを始める。小さな手がかりを発見したと思うと、すぐに袋小路に入り込むことの連続だったのだが……。

 主演は『スピード2』のジェイソン・パトリックとレイ・リオッタ。もともとはリオッタが自分自身のプロダクションで初製作作品として作ったインディーズ映画だったが、試写を観たトム・クルーズが完成度の高さに感心し、自らが製作総指揮を名乗り出てパラマウントとライオンズゲートでメジャー配給されたという話題作。クルーズは監督のジョー・カーナハンに惚れ込み、自ら製作主演する『M:I-3』の監督に彼を指名したという。まさにアメリカンドリーム。

 監督もすごいけれど、主演のふたりも迫真の演技だ。ジェイソン・パトリックは以前から演技力に定評があったものの、いささかキャラクターが地味でハリウッドスターらしい華やかさとは無縁だった。ところが今回はそんな彼の地味さが、ニック・テリスという男の人物像にマッチしている。生活のために命を削る潜入捜査官の仕事を嫌悪しながら、それでも捜査にのめりこんで行く男。自分の境遇を恨みながらも、一方では仕事に人一倍の誇りを持っている男。そんな男の複雑な心境を、パトリックはリアルに演じている。

 レイ・リオッタはこの映画のために体重を15キロも増やし、入魂迫真の演技でヘンリー・オークという頼りがいのあるベテラン刑事をスクリーンに出現させた。命知らずの熱血漢で、罪を憎む気持ちは人一倍。その熱心さのあまり、しばしば捜査規定や捜査権限を踏み外したり、犯人に暴力を振るったりすることもある。警察上層部にとっては頭の痛い存在だが、長年の経験に裏打ちされた捜査能力と、危険な現場にも身体を張って突進していく行動力で、仲間の警官たちから一目も二目も置かれ信頼されている男だ。

 潜入捜査官を主人公にした映画は数多いが、この映画は潜入捜査官の実態を、潜入捜査そのものから少し距離を置いた地点から見ているのがユニーク。主人公のニックは元潜入捜査官だが、その捜査実態についてはほとんど描かれない。タイトル『NARC』は麻薬捜査官という意味だが、本作では間接話法に徹することでその危険な実態を浮き彫りにしていく。映画の中心は「マイク・カルベスはなぜ殺されたか?」というミステリーで、それを探る過程でカルベス自身の実像が明らかになってくるのだ。いわば犯罪映画版の『市民ケーン』みたいなもの。複数の証言が食い違うクライマックスは『羅生門』スタイル。

(原題:NARC)

2003年5月中旬公開予定 日比谷スカラ座2
配給:UIP
(2002年|1時間45分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.uipjapan.com/narc/

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サントラCD:NARC
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