メイド・イン・マンハッタン

2003/04/15 UIP試写室
ホテルのメイドと上院議員候補を主人公にしたシンデレラ・ストーリー。
登場人物がみな生き生きしているのが魅力。by K. Hattori

 貧しい境遇にありながら美しく優しい心を失わなかった女性が、ある日突然お金持ちの独身男性に見初められて幸せな結婚をする……。そんな物語を「シンデレラ・ストーリー」と言う。これは映画やドラマのひとつの類型(ジャンル)であって、本当にその物語が「シンデレラ」をなぞっているかどうかは無関係。だがこの映画『メイド・イン・マンハッタン』は、正真正銘「シンデレラ」を現代に翻案した映画のようだ。脚本を書いたのは『ワーキング・ガール』のケビン・ウェイド。

 マンハッタンの一流ホテルでメイドの仕事をしているマリサは、プエルトリコ系のシングルマザー。その仕事振りは優秀で仲間や上司からの信頼も厚く、退任するマネージャーの後任にならないかという声がかかるほどだ。スウィートルームの横柄な客からブランド服の返却を命じられたマリサは、「どうせ店に返してしまう服なんだから」という同僚の声にうながされ、制服の上から高級コートに袖を通してみる。ところがそんな姿を、たまたま同じホテルに宿泊中のマーシャル議員が目撃。彼は気取ったところがないマリサをスウィートの宿泊客だと思い込み、彼女に猛然とアタックを始めるのだが……。

 監督は『スモーク』のウェイン・ワン。主演はジェニファー・ロペスとレイフ・ファインズ。ホテルのメイドとして部屋の掃除や下働きに明け暮れるロペスがシンデレラで、政治家一族出身の上院議員候補ファインズが王子さまというわけだ。シンデレラをこき使って、自分たちが王子さまの気を引こうとする意地悪な姉の役回りは、ナターシャ・リチャードソンが演じるスウィートの客。シンデレラの魔法をかけてドレスや馬車を用意するのは、ボブ・ホスキンス演じる執事やホテルで働く仲間たち。シンデレラは午前0時に舞踏会を抜け出すが、この映画の中にも同じようなシーンがある。

 ストーリーは「シンデレラ」でも、映画が古びて見えないのはキャラクターが生き生きと現代を呼吸しているからだろう。マリサと息子の関係や、ホテルで働く仲間たちとの関わり、母親との確執などは、紛れもなくこの映画が現代のアメリカの物語であることの照明だ。プレイボーイの議員という役はやや類型的にも思えるが、ペーパークリップのエピソードがこの人物を人間くさい魅力の持ち主にしているし、ファインズも嫌味のない芝居で上流階級の男を演じている。

 映画にはエンパイアステートビルやクライスラービル、自由の女神、セントラルパークなど、ニューヨークの名所が次々に登場する。舞台となるホテルのロケ地は名門ウォルドーフアストリア。これは9・11以降のニューヨークが健在であることを示す、ニューヨーク賛歌の映画になっているのだ。おそらく事件の後、ニューヨークのフィルムコミッションは映画誘致にかなり積極的なのだろう。

(原題:Maid in Manhattan)

2003年5月10日公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:UIP
(2002年|1時間45分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.uipjapan.com/manhattan/

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DVD:メイド・イン・マンハッタン
サントラCD:メイド・イン・マンハッタン
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