テハンノで売春していて
バラバラ殺人にあった女子高生、
まだテハンノにいる

2003/03/20 シネカノン試写室
タイトルはすごく長いが上映時間は短い韓国インディーズ映画。
エロ・グロ・ナンセンスが三拍子そろった怪作。by K. Hattori

 上映時間1時間ながら、観る人に一種の心的外傷(トラウマ)を植え付ける韓国製インディーズ映画。ビデオ撮影された映像をフィルムに変換したキネコ作品で、映像の質はお世辞にもきれいとは言えないのだが、ビデオ撮影特有の荒々しいノイズの向こう側に見え隠れする作り手のこだわりや美意識が、どういうわけか観るものの気持ちを刺激するのだ。エロ・グロ・ナンセンスの三拍子そろった三流エロ劇画誌のような物語なのに、映像はミュージックビデオのように流麗なアンバランスさ。

 繁華街の路地裏で売春をしている女子高生が主人公。立ちんぼで客をとっていた彼女は現場を担任の先生に見つかり、口止めのた5万ウォンの特別コースを要求される。じつはこの担任を心ひそかに愛していた彼女は、この行為によって自分が妊娠したと確信。だが担任は三人組の殺し屋を雇って、女子高生を殺してバラバラにしてしまう。だがその死体は謎の男によって回収され、彼女はサイボーグ化した殺し屋として復活。夜の街で自分を殺した男に再会した彼女は記憶を取り戻し、三人組と担任教師に復讐しようとする。

 「殺された女が自分を殺した男たちに復讐する話」とこの映画を要約してしまうと、この映画の奇妙さを伝えられないような気がする。もしこれがありきたりの復讐譚であるなら、ヒロインが痛めつけられ殺されるまでをせいぜい10分か15分で語り、その後の復讐劇をたっぷりと観せていくのが順当だろう。ヒロインが残虐に殺されたなら、復讐はさらなる残虐さが必要になる。ところがこの映画、ヒロインが殺されるまでにたっぷり30分もかけるのだ。2時間の映画の30分ではない。1時間の映画の30分だ。これでは復讐劇の見せ場に時間がさけないではないか。

 物語のボリュームとしては、やけに頭でっかちなのだ。そもそも導入部のタイトルがやたらと長い。その後の客との行為、教師との出会い、教師との行為も普通じゃない長さだ。全体のバランスを考えると、どうしてこうも導入部が長くなっているのか理解に苦しむ。でもこれはおそらく理屈ではないのだろう。僕のように理詰めで映画を理解したり解釈したりしようとする者には、映画を作る者の衝動的な創作意欲がわからない。ただそれだけの話だ。

 物語は全体として『ロボコップ』を下敷きにしているようだが、他にもいろいろな映画からの引用がちりばめられている。『ゼイリブ』や『ニキータ』のようなB級アクション映画から、われらが黒澤明の『蜘蛛巣城』まで……。この映画はそれらをほぼ原型のまま引用しているのだが、映画の世界観があまりにも異様なので一見すると引用とは気づかずに通り過ぎてしまうほどだ。

 学生の自主制作映画のようなこの映画が、わざわざ日本で劇場公開されるというのが不思議にも思える。だがこのハチャメチャぶりは、十分カルトムービーになる素質を秘めているとも言える。

(英題:Teenage Hooker Became Killing Machine in DaeHakRoh)

2003年5月31日公開予定 新宿武蔵野館
配給:グアパ・グアポ、武藤起一事務所
(2000年|1時間00分|韓国)
ホームページ:
http://www.tehanno.com/

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DVD:テハンノで売春していて
DVD:バラバラ殺人にあった女子高生、
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