アナライズ・ユー

2003/03/18 ワーナー試写室
デニーロとビリー・クリスタル主演のコメディ『アナライズ・ミー』の続編。
デニーロが『ウエスト・サイド物語』を熱唱する。by K. Hattori

 日頃のプレッシャーで情緒不安定になったマフィア組織のボスと、たまたま彼の主治医になってしまった精神科医の交流を描いた、'99年製作のコメディ映画『アナライズ・ミー』の続編。デニーロ、ビリー・クリスタル、リサ・クドロー、ジョー・ビテレッリなど、主要キャストは前作のままだ。監督・脚本も前作と同じハロルド・ラミス。

 ニューヨークで長年マフィア組織のボスをしていたポール・ヴィッティは、収監中のシンシン刑務所で暗殺されそうになったことから、とっさに精神錯乱を装って塀の外へと脱出する。もともと刑務所側もヴィッティの詐病などお見通し。FBIはヴィッティを泳がせることで、水面下でくすぶっているマフィア抗争に油を注ぎ、犯罪組織を一網打尽にしようという魂胆なのだ。そんなことも知らず、精神分析医のベン・ソボルは身近にヴィッティを抱えて大弱り。父親を亡くして精神的にも不安定になっているところに、ヴィッティや彼を狙う殺し屋が飛び込んできたのだからたまらない……。

 前作『アナライズ・ミー』は『ゴッドファーザー』のパロディだったが、今回の映画で下敷きになっているのは『ウエスト・サイド物語』だ。ニューヨークの裏社会で対立する暴力組織があり、両者と関わりを断って生きようとする主人公。表面的にはデニーロがミュージカル・ナンバーを熱唱するという形で『ウエスト・サイド物語』を引用しているのだが、この映画はこの名作ミュージカルを引用することでニューヨーク賛歌を歌い上げているのだ。

 この映画は9・11以後の気分が濃厚に反映している作品だと思う。主人公のソボルが父親を亡くした喪失感を克服する過程にいるという設定は、そのままこの映画が作られた当時のニューヨークを覆っていた気分ではないだろうか。ふたつの大きな力が争っている中で、主人公たちが好むと好まざるとに関わらずそこに巻き込まれていくというストーリーも、何やら時代の空気が反映しているように思えてならない。

 すべての事件が無事に解決したとき、主人公たちが朗々と歌う「サムウェア」のメッセージ性。アメリカがイラクへ最後通告を出したその日にこの映画を観たせいか、この「サムウェア」には感動してしまった。できればこの後、世界に本当の平和が訪れますように……。そう願いながら、結局世界は争いの中で新たな悲劇を生み出さざるを得ないのだろう。『ウエスト・サイド物語』はそういう悲劇を描いた作品だった。

 爆笑ポイントが幾つか用意されている映画で、内容的には前作よりずっと面白いと思った。これはヴィッティやソボルのキャラクターを、こちらが既に飲み込んでいるせいだろう。ソボルが刑務所でヴィッティを診察するシーンは最高。このシーンはエンドクレジットのNG集もすごかった。よくもまぁ笑わずに芝居が出来るものだと感心していたら、やっぱり笑ってたのね。

(原題:Analyze That)

2003年3月29日公開予定 丸の内ピカデリー2他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2002年|1時間36分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.warnerbros.co.jp/analyzeyou/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:アナライズ・ユー
サントラCD:Analyze That
前作DVD:アナライズ・ミー
関連DVD:ハロルド・ラミス
関連DVD:ロバート・デニーロ
関連DVD:ビリー・クリスタル
関連CD:ウエスト・サイド物語(サントラ)

ホームページ

ホームページへ