許されざる者

2003/02/28 東映第1試写室
加藤雅也と藤竜也が兄弟やくざを演じた、三池崇史監督の新作。
凄まじい暴力描写と、豪華な出演陣の顔ぶれは見もの。by K. Hattori

 監督が三池崇史、脚本が武知鎮典、主演が加藤雅也という、昨年の『荒ぶる魂たち』と同じ顔ぶれが揃ったやくざ映画。三池監督と武知脚本のコンビ作としては、『新・仁義の墓場』に続く3本目の映画となっている。『荒ぶる魂たち』は「女性も泣けるやくざ映画」と世評は高かったようだが、僕自身はあまり高く買っていない作品。しかしその次の『新・仁義の墓場』は面白く観て、今回の『許されざる者』は「こりゃイイゾ!」という出来上がりだった。

 「復讐」という報いのない目的のために、命を削る男たちの姿が悲しい。最初からわかりきっている悲劇の結末に向って、まっしぐらに死に急ぐことしかできない男たち。そんな男たちを寂しそうな眼差しで見つめ、離れた場所からそっと手を差し伸べることしかできない者たちの姿も切ない。器用に立ち回ることのできない馬鹿な男たちは、自分の意地を張り通して死んでいく。それは孤独な復讐者となった主人公たちだけでなく、彼らに狙われることになる男たちとて同じことだ。幾多の修羅場をかいくぐり、権力の階段を上り詰めてさえ、最後の最後には自分の生き方を貫くことしかできないオスたち。

 目の前でヒットマンに親分を殺された守部梓。連城一家の総長と護衛ふたりをあっという間に射殺したヒットマンは、梓にニヤリと笑いかけるとあっという間に姿を消す。そのヒットマンは、幼い頃に生き別れた梓の実の兄・芹田軍司だった。だが今回首尾よくマトを仕留めた軍司を待っていたのは、雇い主による口封じという裏切り行為だった。これには軍司もカチンと来る。いったい誰がなんのために自分を雇ったんだ? かくして血を分けた兄弟は、総長殺しの真の依頼人を突き止めるため、屍の山を築いていくのだ。

 この映画の主人公たちは、一切の妥協や駆け引きをしない。「親の復讐をする」と決めたら、決して後に引かず前に突き進んでいく梓。「俺をハメた奴は許さない」と決めたら、行き着くところまで立ち止まろうとしない軍司。しかしこうしたテコでも動かせない強靱な意志と行動力が、組織への義理立てや個人的な忠義心から出ているものではないところが、この物語のユニークさと言える。主人公たちを行動に駆り立てるのは、主人公たちの中にある情念のようなものだ。結果としてはそれがやくざとして「筋を通す」行動になってはいるが、己の情念のままに突き進むという意味で、この男たちは『新・仁義の墓場』のハチャメチャな主人公と同じなのかもしれない。映画の中で藤竜也が演じる軍司のキャラクターには、多分にそうした部分があるではないか。

 出演している顔ぶれが超豪華。まっすぐなストーリーが、こうしたベテラン助演陣の芝居によって少し揺らぎ、微妙に屈折して、複雑なドラマに変化していく。最近はバラエティなどでも人気の相田翔子が、主人公の妻役で意外な好演をしているのも見ものだ。

2003年3月29日公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:シネマパラダイス 宣伝:オムロ
(2003年|2時間29分|日本)
ホームページ:
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