レセ・パセ
自由への通行許可証

2003/02/27 東宝第1試写室
第二次大戦中のフランス映画界のレジスタンスを描いたドラマ。
主人公ふたりに接点がなく、話が追いにくい。by K. Hattori

 第二次大戦中のフランス映画界で働く人々を、実話をもとに描いたベルトラン・タヴェルニエ監督の最新作。主人公になっているのは、実在したふたりの映画人だ。ひとりは戦争中を助監督として過ごし、戦後になって監督としてデビューするジャン=ドヴェーヴル。もうひとりは戦前のフランス名画『北ホテル』の脚本家であり、戦後も『肉体の悪魔』や『禁じられた遊び』などの脚本を書いたジャン・オーランシュ。物語の中心舞台となっているのは、ドイツ系の映画会社コンティナンタル社だ。

 映画の助監督として働きながらレジスタンス運動にも関わっていたジャン=ドヴェーヴルは、友人の映画スタッフに誘われてドイツ系映画会社コンティナンタル社で働くことになる。ただし正式契約についてはのらりくらりと先延ばしし、常に臨時雇いの身に甘んじていたのはせめてもの精神的レジスタンスと言えるだろう。同じ頃、脚本家のオーランシュもコンティナンタル社からの誘いを断るのに苦労していた。コンティナンタルからの注文を露骨に断れば、反独主義者として収容所送りになりかねない。彼は友人の映画プロデューサーに掛け合い、とにかくひっきりなしに仕事の注文を受けることで、この不幸な時代を乗り切ろうとしていた。だが友人の窮乏を見かねたオーランシュは、とうとうコンティナンタルの仕事を受けることになる。

 占領はされても直接間接にドイツには協力したくないという、フランス人の心意気を描いた物語と言えるだろう。オーランシュのように「ドイツ系映画会社では仕事をしない!」という選択もあり得るし、逆に「ドイツ経営が会社にフィルムや資材を浪費させてやる!」という逆の意味でのサボタージュもあり得た時代だ。ジャン=ドヴェーヴルはドイツ経営が会社で働きながら、スタジオで反ドイツのビラを配布して回り、会社が配布した通行証を使って手榴弾や銃を同士のもとに届けたり、列車爆破という直接的な武力闘争をしてのける。ユダヤ人の共産主義者が、まんまと会社にもぐり込んで身の安全を図ったりもしている。撮影に使う食料や酒はあっという間に盗まれてしまうが、それもドイツの金だと思えば良心とて痛まない。むしろ痛快なものだ。

 2時間50分の大作。時代の風景や風俗を再現した美術は素晴らしいし、「映画を作る映画」に映画ファンはいつだってワクワクするものだ。しかしこの映画、直接はあまり接点のなかったジャン=ドヴェーヴルとジャン・オーランシュのふたりを主役にしていることで、ドラマの構成がわかりにくくなっている面があると思う。これは本来別々の話だ。それを無理矢理1本の作品に同居させたことで、どちらの話も筋を追いにくくしてしまったように思える。これは主人公をどちらかに絞って2時間の映画にするか、映画人群像に徹して4時間の映画にするかという素材なのだ。3時間弱は中途半端かもしれない。

(原題:LAISSEZ-PASSER)

2003年GW公開予定 シャンテ・シネ
配給・宣伝:シネマ・パリジャン
(2002年|2時間50分|フランス)
ホームページ:
http://www.cinemaparisien.com/

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