アルマーニ

2003/02/27 松竹試写室
デザイナーのアルマーニに1年間密着取材したドキュメンタリー。
アルマーニの強烈な個性が彼のブランドを支えている。by K. Hattori

 世界的なファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニの1年に密着したドキュメンタリー映画。取材したのは'99年から'00年の春まで。この映画の主役は「アルマーニのデザイン」や「アルマーニの世界」ではなく、「アルマーニという人間」そのものだ。アルマーニがファッション界でどんな地位にあるか、今までにどんな功績を残してきたのか、今なお世界にどんなインパクトを与え続けているかなどについては、あまり触れようとしない。それらは映画に登場する会話、インタビュー、次々に登場するセレブたちの顔ぶれなどによって、間接的に伝わってくるものだ。カメラが追いかけているのは、あくまでもアルマーニ個人。巨大なファッション帝国を作り上げたアルマーニの、人を引きつけて止まないカリスマ的なキャラクターそのものだ。

 僕自身はファッション音痴なのでアルマーニと聞いても別になんの感慨も感激もないのだが、彼の作る服がハリウッドのセレブ御用達であることは映画ファンにもよく知られていることだと思う。この映画にも、スコセッシ、グレン・クローズ、シュワルツェネッガー、ジャン・レノ、ソフィア・ローレン、エリック・クラプトン、ティナ・ターナー、リッキー・マーティン、サッカー選手のロナウドなどが次々に登場してくる。こうしたセレブたちがアルマーニを着こなすことで、アルマーニというブランド力が高められている部分もあるに違いない。映画ファンがアルマーニを強く意識したのは、おそらく'87年の映画『アンタッチャブル』あたりからだと思うけれど、最近も『スパイダーマン』や『マイノリティ・リポート』に衣装を提供しているのだとか。堅気でありながら、ちょっと堅気じゃなさげに見えるのがアルマーニなのかな。

 アルマーニは3千人の従業員を抱えるファッション帝国の総帥だが、すべてを部下に指示して自分は悠然とオフィスに閉じこもっているというタイプではない。彼はショーが開かれれば真っ先に陣頭指揮に立ち、自ら会場に出向いて、衣装、照明、音楽、モデルの髪型、メイク、歩き方、パーティでの給仕の歩き方まで、すべてに自分で指示を出す。新しい店がオープンするとなれば、外装のサイン、店舗内の素材、商品レイアウト、照明の位置、取材への対応、招待客の歓迎など、やはりありとあらゆることに気を配る。彼は帝国全体に目を配る皇帝であると同時に、現場での作戦指揮を執る将軍でもある。とにかくエネルギッシュ!

 僕はこれを観ていて、北朝鮮の金正日を連想してしまった。彼も映画撮影所や工場にしばしば出向いては、現場のスタッフに直接指示を出すことで知られている。後継者問題に悩んでいるのも同じだ。この映画を金正日が観たら、「俺もああなりたい!」と思うのではなかろうか。たぶんふたりは、気質的には似ていると思う。根本的な違いは、美意識の有無かもしれない。

(原題:Giorgio Armani: A Man for All Seasons)

2003年4月26日公開予定 ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ
配給:コムストック 宣伝:樂舎
(2000年|1時間19分|英、伊)
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DVD:アルマーニ
関連洋書:Giorgio Armani

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