ワンピース
THE MOVIE
デッドエンドの冒険

2003/02/26 東映第1試写室
劇場版『ワンピース』の第4弾は、海賊同士の戦いを描く冒険活劇。
甘いところもあるけれど、これが作品の魅力なのかも。by K. Hattori

 子供たちに人気のTVアニメ「ワンピース」の劇場版第4弾。金欠病になったルフィ海賊団が、一攫千金を夢見て海賊たちによるルール無用のスピードレース「デッドエンド」に参加する。要するに「ワンピース」版の『キャノンボール』だ。個性豊かな海賊たちとの駆け引きや、先を争う船同士がつぶし合いをする前半から、ルフィと同じ能力者である宿敵ガスパーデ将軍との戦いや、孤独な賞金稼ぎシュライヤのエピソードがクローズアップされる後半まで見せ場が満載。今までは他の短編と合わせての公開だったが、今回の映画はこれ1本で勝負の長編1時間35分。気合いの入り方が違うのだ。

 僕は「ワンピース」をほとんど映画版でしか観ていないのだが、これまでの3作に比べて、今回が一番面白かったように思う。今回の映画でルフィたちの相手になるのは、海賊、賞金稼ぎ、海軍など、ツワモノぞろいの海の男たちばかり。悩みや困りごとを持ったゲストキャラをルフィたちが助けるとか、ルフィたちの旅とは本来別次元にあるトラブルに巻き込まれるということではなく、登場人物たち全員の利害関係がじつにはっきりしている。海軍は海賊退治に躍起になり、海賊たちは海のアウトローとしての価値観を共有しながらもレースの場では敵同士、そして悪役ガスパーデは自分がナンバーワンになるために権謀術数を張り巡らせる狡猾な海のハイエナだ。対立ポイントが明快で、ドラマの角がきれいに立っている。こうした明確なドラマの中では、人物たちも生き生きと動いてくれるのだ。

 ただし釜焚きジイサンと助手アナグマのエピソードは、いささか甘ったるいようにも感じた。これはエピソードが少し足りないのではなかろうか。ふたりの関係について事前の伏線がないまま、いきなりアナグマが銃を持って街に飛び出していくから、なんだかアナグマの行動がドラマの進行に都合が良すぎるように見えてしまう。ふたりが海賊のメンバーではなく、船が奪われた時たまたま捕らえられた一種の囚人(奴隷)なのだということは、もっと早い段階で観客に伝えておいた方がいいと思う。それに釜焚きジイサンは病気で死にかけていたはずなんですけど、最後はどういうわけか元気だったなぁ……。これじゃ命がけで金を作ろうとしたアナグマの行動が、なんだかバカバカしく見えちゃうよ。

 映画冒頭でルフィたちの船が嵐の海で遭遇した海軍の砲撃をすり抜けていくシーンが、めちゃくちゃに格好いい! もうこのシーンだけで、ルフィたちの操船技術や度胸がすべて見えてしまう。メンバーが多くなったこともあってそれぞれの見せ場を作るのが大変そうだが、キャラクターが固まっているので、台詞の掛け合いだけでも十分に楽しめるようになっているのはさすがだ。ちょっとした台詞だけで、互いの信頼感や絆が伝わってくる。今回はかなりハードに冒険活劇です。しびれました。

2003年3月1日公開予定 丸の内東映他・全国東映系
配給:東映
(2003年|1時間35分|日本)
ホームページ:
http://www.toei-anim.co.jp/movie/2003_onepiece/

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DVD:ワンピース THE MOVIE/デッドエンドの冒険
サントラCD:ワンピース THE MOVIE/デッドエンドの冒険
主題歌CD:sailing day (BUMP OF CHICKEN)
原作:ONE PIECE (尾田栄一郎)
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