ハッピー・フューネラル

2003/02/20 ソニー・ピクチャーズ試写室
アメリカの巨匠監督の葬儀を仕切ろうとする中国人の奮闘。
中国、アメリカ合作のコメディ映画。なかなか楽しい。by K. Hattori

 仕事にあぶれた中国人の映画キャメラマン、ヨーヨーのもとに、世界的な巨匠監督ドン・タイラーから仕事の依頼が舞い込む。現在紫禁城で新作が撮影されている監督に密着し、メイキング映像を撮ってほしいというのだ。だが当のタイラー本人はこの新作にまったく興味がない様子で、撮影はしばしば中断して経費がかさむばかり。しかも「俺が死んだら中国式の賑やかな葬式をしてくれ」というメッセージをヨーヨーに託して、撮影途中で昏倒して危篤状態に陥ってしまう。かくしてタイラーの“遺言”どおり葬儀委員長になったヨーヨーは、イベントプロモーターの友人ルイスと協力し、タイラーの葬儀を華やかに演出しようとプランを練るのだが……。

 ヨーヨーを演じるのは『活きる』のグォ・ヨウ。巨匠タイラー監督をドナルド・サザーランドが演じ、そのアシスタント兼通訳の中国系アメリカ人女性ルーシーを『ワンス・アポン・ア・アタイム・イン・チャイナ』シリーズのロザムンド・クワンが演じている。物語の前半は、ハリウッドの巨匠監督と生粋の中国人ヨーヨーの異文化交流と新たに芽生えた友情の物語。タイラーが危篤になってからは、ヨーヨーとルイスが中心になっての葬儀プランニングのドタバタ。最後は「映画を作る映画」になってジ・エンドという構成。

 この映画の見どころであり、もっとも多くの時間が費やされているのは、映画中盤から終盤ぎりぎりまで続く、葬儀のためのスポンサー集めだ。「中国では70歳以上の老人が亡くなると、みんなで笑って送り出すんです」というヨーヨーの話に感銘を受けたタイラーは、自分が死んだ時も中国式に笑っておくってほしいと願う。その“遺志”をくんだヨーヨーは、大いに張り切って葬儀の企画を練る。ところがあてにしていたタイラーの資産がゼロだと知ると、葬儀のために大口・中口・小口のスポンサーをかき集めようと奔走する。かくしてタイラーの葬儀は、オリンピックやスーパーボウル並みに協賛企業が入り乱れる、一大商業イベントになってしまうのだ。

 こうした映画が作られるのは、現代の中国が共産主義から急速に資本主義化していることの反映だろう。『ラスト・エンペラー』についてどう思うかと問われ、「皇帝は大勢の女に囲まれ、国民の金で衣食していたひどいヤツだ」と答えていたヨーヨーが、あっという間に商業主義にまみれていく滑稽さ。素朴な労働者がほんの数日で、世界的なイベントを仕切るプロデューサーになってしまうバカバカしさ。ヨーヨーの豹変ぶりは、そのまま現代中国の姿でもある。

 監督・脚本のフォン・シャオガンは中国で一番人気のある監督だというが、本格的に日本で作品が公開されるのはこれが初めてになるようだ。ロザムンド・クワンも一時引退状態だったのが、この作品でカムバックしたのだとか。最後のオチまで気の利いた映画。なかなか楽しめます。

(原題:大腕/BIG SHOT'S FUNERAL)

2003年春公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(2001年|1時間40分|中国、アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/worldcinema/happyfuneral/

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