トランスポーター

2003/02/11 新宿東急
リュック・ベッソン製作のアクション映画。導入部は面白いけど……。
スー・チーの本格的な世界進出作という意味かな。by K. Hattori

 リュック・ベッソン製作・脚本のアクション映画。あらゆる荷物を規定時間内に目的地まで届けるプロの運び屋が、ある日職業上のルールを破ったことからトラブルに巻き込まれてしまうというお話。主演は『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 』『スナッチ』のジェイソン・ステイサムと、香港の人気女優スー・チー。監督は『クローサー』が公開待機中のコーリー・ユンとこれがデビュー作のルイ・レテリエだが、製作・脚本がベッソンだけに、理屈などまるでない「毎度バカバカしいお話」になっている。

 映画の導入部はなかなか軽快だしかっこいい。オープニングタイトルから、銀行強盗の逃亡を助け、彼の仕事に疑惑を持つ刑事が自宅を訪ねてくるあたりまでは「これはすごく面白いのでは」と期待させる。主人公の何事にも動じないプロフェッショナルぶりがうまく表現できていると思うし、この主人公につきまとう刑事との距離感も、ある種の疑似親子関係のような穏やかさと心地よさを持っている。まぁよくあるパターンではあるのだけれど、それがぴたりとツボにはまっている感じ。

 ところがこの映画、肝心のスー・チーが登場したあたりから、どうにも調子が狂ってくる。主人公は自分の仕事に課している厳しいルールを、なぜか破ってしまうのだ。なぜ、なぜ、なぜなの〜? 荷物が若い女だと知って、つい仏心を出してしまうという流れならまだ理解できる。ところが彼はそうじゃない。荷物が人間だと知った途端、バッグを開ける前からやけに親切なオジサンに変身してしまうのだ。目の前で人が撃ち殺されても、眉ひとつ動かさなかった男にして解せない行動。要するに脚本を書いたベッソンは、このシーンで主人公をトランクの中身と対面させる必要を感じながらも、そのためのうまいアイデアを思いつけなかったのだと思う。脚本が生煮えなのですね。もっと煮詰めていけば、無理なく次の展開に入れたと思うのになぁ。

 まぁしょせんは「毎度バカバカしいお話」だから、ご都合主義だろうと何だろうと話が進められればそれでいいのかもしれない。でも同じようなご都合主義が、キャラクターの設定を生かすこともある。例えばスー・チー演じる中国娘と父親の関係がそれだ。この映画はフランスが舞台なのに台詞は全部英語。中国人の父と娘も英語で会話している。それを合理化するため、父親役のリック・ヤングが「せっかく高い金を出して英語を習わせたのに!」と言わせたアイデアは素晴らしい。これによって、この父親の中国に対する憎悪にも似た感情が表現されるし、娘の父親に対する反抗心も見えてくる。

 ラストはもうちょっと別の解決法があったような気もする。このあたりも含めて、やっぱり脚本がひどく生煮えなのだなぁ。アクションは面白いけど、同じコーリー・ユン監督の『クローサー』よりは劣ると思う。

(原題:THE TRANSPORTER)

2003年2月1日公開 東劇他・全国松竹東急系
配給:アスミック・エース
(2002年|1時間33分|アメリカ、フランス)
ホームページ:
http://www.transporter.jp/

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DVD:トランスポーター
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