烈風 Action!?

2003/02/06 KSS試写室
ブルース・リー・マニアの監督が撮ったブルース・リー・マニアの映画。
仁義ヌンチャクを巡る組織の争いに青年が巻き込まれる。by K. Hattori

 ブルース・リーの熱狂的な信奉者である青年が、日本のヤクザと中国マフィアの抗争に巻き込まれて、自分でもそれまで気づいていなかったカンフーの才能を花開かせるというアクション・コメディ映画。、ブルース・リーの熱狂的なファンとしてドキュメンタリー映画『Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯』の製作に関わった竹田直樹が、原案・編集・脚本・監督を担当している。出演は吉岡毅志、新井雄一郎など、オーディションで選ばれた若手の俳優たち。下元史朗や菅田俊などのベテランも出演しているが、映画自体はいかにも「お金のない自主製作映画」というニオイがぷんぷんしている。

 だがこの映画のいいところは、作り手たちが自分たちの映画作りに自己満足していないところだ。この映画は作り手本人たちが面白がってそれで終りではなく、観客の側に大きく開かれた娯楽作品として成立している。自分たちの力不足を十分に承知の上で、観客の期待に精一杯応えようとする誠意がある。この映画には、「観る人を楽しませたい」というエンターテインメント精神が、「自分たちが好きなアクションについては嘘を付きたくない」という心意気が、「お金がない部分は努力や工夫で補ってみせる」という情熱がある。

 無論こうして作り手の“汗”が見えてしまうのは、本来ならエンターテインメントとしては失敗。本当のエンターテインメントとは、観客の目に触れないところで血の滲むような努力を重ね、ステージの上では笑顔を振りまきながらいとも簡単そうに一流の芸を見せるものだからだ。努力や創意工夫を売りにするのは、あまりにも泥臭すぎるし野暮ったい。芸としては二流どころか三流以下だ。試験の答案を間違えた子供が「それでも僕は一生懸命やったんです」と自分の努力を言い訳にするのと同じ逃げだ。しかしそれでも、僕はこの映画が嫌いじゃない。好きか嫌いかの二分法で問われれば「好き」なのだ。

 はっきり言うと、この映画のストーリー部分はまるでダメだと思う。もともとアクションパートだけの短い作品として企画されながら、諸般の事情で長編作品にしてしまったという事情もあるのだろう。だがそれにしても、この脚本はお粗末すぎる。荒唐無稽な絵空事ならそれでもいいのだが、その絵空事を成立させるための段取りも仕掛けもまったくなしに、堂々と物語を進行させてしまうのは大胆不敵と言うよりどだいが無茶なのだ。しかしこの映画、アクションはかなり水準が高い。ワイヤーも合成も使わず、生身の肉体を使ってこれだけ長いアクションシーンを見せるのは大変なことだと思う。

 アクション映画は撮影と編集の技術も大事だけれど、それ以前にまず演じている俳優たちの“体技”が重要なのだという常識を、改めて感じさせてくれる映画だった。この作品をきっかけに、スタッフとキャストがさらなる飛躍を遂げることを願わずにはいられない。

2003年4月5日公開予定 テアトル池袋(レイト)
配給:UIP
(2003年|1時間?分|日本)
ホームページ:
http://www.kss-movie.com/

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