黄泉がえり

2003/02/01 日劇2
塩田明彦監督初のメジャー映画。ある日突然死んだ人が戻ってくる。
面白いファンタジー映画だけれど印象が緩すぎる。by K. Hattori

 SMAPのメンバーで映画『メッセンジャー』に出演していた草g剛と、NHKのテレビ小説「あすか」の好演がまだ印象に残る竹内結子が主演したファンタジードラマ。梶尾真治の同名小説を、『月光の囁き』『どこまでもいこう』で注目された塩田明彦監督が映画化している。上映時間は2時間6分。死んだはずの人たちが、帰ってきて欲しいと願う親しい人たちの思いに応えて甦ってくるという話だが、映画はその現象によって生まれる人々の喜びや悲しみを幾つものエピソードとして拾い上げて並列進行させていくグランドホテル形式を採用している。これがはたして良かったのか悪かったのかは、意見が分かれるところだろうと思う。この映画に感動する観客は、おそらくこうしたエピソードの集積に感動するのだろう。でも僕はこうしたエピソードが少々かったるく感じる。草gくん演じる川口平太と竹内結子演じる橘葵のエピソードを中心にまとめれば、これはどう考えたって1時間40分前後になる映画だよ。

 この映画の構成に一番近いのは『ディープ・インパクト』だろう。ひとつの事件に向き合うことで、大勢の人々のドラマが同時進行していく。そこでは親しい人たちとの再会があり、和解があり、別れがある。僕は『ディープ・インパクト』も「OK! 許す」というタイプなので、今回の『黄泉がえり』ももちろん許してしまう。映画のあちこちに不可解なところもあるけれど、そうしたところにはすべて目をつぶってやろうじゃないかと思わせる作品だ。映画の序盤は確かにだらだらと長い。しかしこのだらだらとした日常描写が、この映画の基調を作っているのだと思う。日常性のリアリズムがきちんと描けているから、映画の終盤に物語が少々飛んだり跳ねたりしても、全体としてはしっくりとひとつの世界観の中に収まっている。これは監督の持ち味だろう。

 ただしいくらなんでも、エピソードはもう少し整理した方がいいと思うのだ。人間のそれまでの人生を根底から覆し、それ以後の生き方さえ大きく変えてしまうような大きなドラマを、わずか数分で語ってしまうような場面が多すぎる。俳優の顔でそれを乗り切ろうとする意図も映画のあちこちに見えるのだが、それがうまく機能していない点も多い。北林谷栄はいい。哀川翔もいいだろう。田辺誠一はぎりぎりセーフ。でも田中邦衛はちょっと違うんじゃないか? 覆面歌手RUI(柴咲コウ)のエピソードも、コンサートのシーンだけあれば十分に意味が通じると思うのだけれど……。

 映画全体の印象がひどく緩い。しかしこの緩さの中に観客のうち少なくない人々が感情移入し、大きな感動を味わう秘密があるようにも思う。しかし僕はこの緩さが、最初から最後までどうにも気になって仕方がなかった。この緩さゆえに、「ええっ!そうだったの?」というどんでん返しが鮮やかに決まらず、衝撃が鈍いものになってしまっている。

2003年1月18日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
(2002年|2時間6分|日本)
ホームページ:
http://www.yomigaeri.jp/
ホームページ:
http://www.toho.co.jp/movie-press/yomigaeri_press/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:黄泉がえり
サントラCD:黄泉がえり
主題歌CD:月のしずく(RUI)
原作:黄泉がえり(梶尾真治)
関連書籍:DOCUMENT 草g剛 in 「黄泉がえり」
関連DVD:塩田明彦監督
関連DVD:草g剛
関連DVD:竹内結子

ホームページ

ホームページへ