ラスムスくんの幸せをさがして

2003/01/16 メディアボックス試写室
原作は「長くつ下のピッピ」「ロッタちゃん」のリンドグレーン。
孤児院を脱走したラスムスと風来坊オスカルの旅。by K. Hattori

 「長くつ下のピッピ」や「名探偵カッレくん」「やかまし村」などの人気シリーズ、最近なら「ロッタちゃん」で知られる、スウェーデンの国民的児童文学作家アストリッド・リンドグレーン。昨年1月に惜しまれつつ亡くなった彼女の作品「さすらいの孤児ラスムス」を、リンドグレーン作品の映画化に定評のあるオル・ヘルボムが映画化した'81年製作のスウェーデン映画。

 リンドグレーンの「やかまし村」はラッセ・ハルストレムの映画が日本でも知られているが、ヘルボム監督は'60年代に「やかまし村」を原作に2本の映画を作っているから、いわばハルストレムの大先輩。日本には『長くつ下のピッピ』シリーズの何本かが輸入されており、'70年代にNHKで放送されていた「長くつ下のピッピ」シリーズ(吹替えはキャロライン洋子)や「いたずらっ子エミール」もヘルボム監督の手によるもの。なんだ、僕にとっても馴染みの監督さんじゃないか! だがヘルボム監督は'82年に亡くなり、この『ラスムスくんの幸せをさがして』が映画作品としては遺作になったようだ。

 主人公ラスムスは仲間たちと孤児院で暮らしている。夢は食料品店の主人に引き取られて、美味しい食べ物に囲まれて暮らすこと。だが子供のいない金持ちが引き取っていくのは、いつだって金髪で巻き毛の女の子ばかりなのだ。三度三度のオートミールと保母のヒステリックな叫び声にうんざりしたラスムスは、ある日とうとう孤児院から逃げ出し、自分の力で両親になってくれる人を探そうと決意する。飛び出した先で出会ったのが、アコーディオン片手に気ままな放浪者暮らしをしている中年男オスカル。ラスムスはオスカルと一緒に村から村、町から町へと旅をする。だがある町で連続強盗事件が起きた時、たまたま近くを通りかかったオスカルとラスムスが警察に疑われてしまう。

 映画の主人公は間違いなくラスムスなのだが、お話の魅力を引っ張っていくのは自称「天国の風来坊」のオスカルだ。アコーディオンを巧みに操り、即興で次から次に歌が飛び出す。行く先は足の向くまま気の向くまま。町の辻で歌を披露して投げ銭をもらい、屋敷や農場では門付のように歌を披露して食べ物や小銭を恵んでもらう。祭の日は放浪者にとって稼ぎ時だ。日本人に愛され続けたフーテンの寅のスウェーデン版が、この愛すべきオスカルなのだ。

 この映画の魅力は、スウェーデンの美しい夏の風景が画面の隅々にまで充ち満ちていること。幼い子供が風来坊を志願して村や町を旅していくというお話は、この美しい風景があればこそ成立しているのだと思う。この映画を観た人は誰しも、オスカルやラスムスと一緒にスウェーデンの田舎をブラブラ歩きしてみたくなるだろう。物語の最後にはあっと驚くオチが用意されているのだが、それが素直に納得できてしまうのも、この美しい風景あればこそだと思う。

(原題:RASMUS PA LUFFEN)

2003年春休み公開予定 シネリーブル池袋
配給:東芝デジタルフロンティア 宣伝:フリーマン
(1981年|1時間45分|スウェーデン)
ホームページ:
http://www.tdf.toshiba.co.jp/tdf/rasmus/

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DVD:ラスムスくんの幸せをさがして
原作:さすらいの孤児ラスムス
関連書籍:リンドグレーン

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