新・仁義なき戦い/謀殺

2003/01/15 東映第1試写室
シリーズ誕生から30年目に公開される12本目となる最新作。
実録やくざ映画風にアレンジされた仁侠映画か。by K. Hattori

 '73年に製作されたシリーズ第1作目以来、これまで合計10本の映画が作られた『仁義なき戦い』シリーズの最新作。広島のやくざ抗争事件を取材した飯干晃一の原作を笠原和夫が脚色し、菅原文太演じる広能昌三を主人公に、深作欣二が監督した最初の4本がオリジナルの四部作。5作目は脚本家を替えてその後日談を描き、6作目からの3本は菅原文太主演ながら、飯干晃一の原作を離れた作品。9作目の『その後の仁義なき戦い』は工藤栄一監督が根津甚八主演で撮った映画で、10作目はそれから21年ぶりに豊川悦司主演で作られた阪本順治監督作。今回の映画は新人の橋本一監督のもと、高橋克典や渡辺謙が主演した作品。もちろん飯干晃一原作ということになっているが、中身はまったくのオリジナル作品だ。

 大阪の暴力団組織・尾田組の組長が狙撃され、組長は無傷だったが、組のナンバーツーである若頭は射殺されてしまう。本家である佐橋組は若頭の杉浦を通じて尾田組長の引退と組織の若返りをうながすが、尾田組長は後継者不在を理由になかなか首を縦に振らない。若頭補佐の矢萩は自分の兄貴分である藤巻を二代目に立てようとするのだが、古風な武闘派やくざ藤巻を危険視する本家の杉浦は、むしろ自分と親しい矢萩を後継に推そうと画策。尾田組長は自分が引退に追い込まれるのを阻止するため、矢萩と藤巻の仲を引き裂こうとする。かくして尾田組跡目相続をめぐり、血で血を洗う内部抗争が生まれてしまう。

 脚本は成島出と我妻正義。タイトルは『仁義なき戦い』だが、主人公の矢萩は兄貴分の藤巻をひたすら盛り立て、親分に刃向かうこともなく両者の板挟みになって苦しむ義理と人情の男のように見える。これじゃ『仁義なき戦い』という看板に偽りありなんじゃないの? 尾田組の跡目相続を巡るゴタゴタは、東映仁侠映画の名作『博奕打ち・総長賭博』の引き写しみたいだ。高橋克典演じる矢萩は鶴田浩二。渡辺謙が演じた兄貴分の藤巻は若山富三郎。組織内の力関係の中で急遽後継に指名されてうろたえる佐奈田は名和宏の役回りだろうか。本家の杉浦は金子信雄と同じようなポジション。

 物語の結末は違うけれど、こうして並べてみるとふたつの映画は瓜二つ。今回の『新・仁義なき戦い/謀殺』は、タイトルとは裏腹に先祖返りした現代版仁侠やくざ映画だったのだ。金と権力だけが物を言う現代やくざ社会の実態を、仁侠道など絵に描いた餅と化した『仁義なき戦い』の世界だと喝破したオリジナルシリーズのコンセプトは、今回の映画から消えて無くなっている。

 ただしこの映画が古い仁侠映画と異なるのは、最終的には義理人情の古いやくざが勝利するのではなく、仁義を無視した欲得ずくのやくざがのうのうと生き延びることだろうか。この映画はひとつの作品の中で、東映仁侠映画から実録やくざ映画に移行していく、東映やくざ映画史を再現しているのだ。

2003年2月15日公開予定 池袋シネマサンシャイン他・全国洋画系
配給:東映ビデオ 配給協力:アースライズ
(2002年|1時間50分|日本)
ホームページ:
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DVD:新・仁義なき戦い/謀殺
サントラCD:新・仁義なき戦い/謀殺
原作:仁義なき戦い(飯干晃一)
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