フィアー・ドット・コム

2003/01/07 映画美学校第2試写室
アクセスした者を48時間で死に至らしめる呪いのウェブサイト。
死にたくなければサイトの謎を解くしかない! by K. Hattori

 地下鉄構内で目と鼻から出血して死んだ男を調べていたマイク・ライリー刑事は、その直後警察署に運び込まれた若い男が同じように目と鼻から出血しているのを見て不審に思う。男の住居を調べたところ、バスダブの中でやはり目と鼻から出血して死んでいる若い女を発見。これは新たな伝染病か? 保健省の女性調査官テリー・ヒューストンと遺体や周辺を調べたマイクだったが、伝染性の病原体は発見できない。残されたビデオからわかったのは、死んだ男女が直前にとあるウェブサイトにアクセスしていたことだった……。

 インターネットのサイトにアクセスすると呪われるというアイデアは、黒沢清の『回路』にもあった。ある映像を見た人々が、それから一定時間内に次々死んでいく。死を避けるためには、その映像から与えられた謎を解かなければならない。これは『リング』ではないのか。この映画はこうした日本のホラー映画にたっぷり影響を受けたホラー映画。主演はスティーヴン・ドーフとナターシャ・マケルホーン。監督は『TATARI』のウィリアム・マローン。

 映画の後半まで観ていくと、この物語が『リング』に強い影響を受けていることがわかる。ただしこの映画ではドラマを「呪いのウェブサイト」だけでまとめきれず、女性を誘拐してはインターネットで殺人中継をする“ドクター”という連続猟奇犯罪者の話をからめている。半分が超常現象ホラーで、半分がサイコスリラーなのだ。でもこのふたつはまったく性格の違う恐怖なので、組み合わせてしまうと互いに恐さを打ち消し合ってしまうように思う。

 スティーヴン・レイが演じる冷血な殺人鬼は貫禄充分なのだが、この男は世の中の物理法則に支配されているちっぽけな人間に過ぎない。ウェブサイトにアクセスした人間を無差別に殺していく超自然的な呪いのパワーに比べたら、誘拐した女性を拷問して殺す男の恐さなどナンボのもんじゃい! 呪いのサイトは一度に何十人でも何百人でも殺せるけど、ドクターが殺せるのはたかだか2日にひとりじゃないか。一方で呪いのサイトは、好奇心に負けてその中身を見てしまわないかぎり害はない。女性を無差別に誘拐して殺す殺人鬼の方が、本人の意思と関係なく被害に遭うという意味では恐ろしいものかもしれない。ふたつの恐怖はこうして互いの恐さを損ねてしまうのだ。

 マイク刑事はドクター事件を追っていたのだが、事件捜査の権限をFBIに奪われてから呪いのサイトを調べ始める。映画は呪いのサイト事件を調べていくマイクとテリーの活動の合間に、新たな犠牲者を拉致し拷問するドクターの姿をインサートしていく。このふたつは最後に合流するのだが、それまでは話がふたつに分裂していて、どちらの話にも観客が没入できない。呪いのサイトの話に物語を集中させて、ドクターの話は途中から小出しにしていった方がよかったのではないだろうか。

(原題:Fear dot com)

2003年1月25日公開予定 銀座シネパトス、新宿ジョイシネマ3
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2002年|1時間41分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.feardotcom.jp/

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DVD:フィアー・ドット・コム
サントラCD:フィアー・ドット・コム |Fear dot com
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