24アワー・パーティ・ピープル

2002/12/12 GAGA試写室
英国マンチェスターで活動したファクトリー・レーベルの全貌を、
マイケル・ウィンターボトム監督が映画化。by K. Hattori

 マンチェスターのローカルテレビ局でレポーターをしていたトニー・ウィルソンは、自分自身が司会をしている音楽番組で最新のパンク・ムーブメントなどを紹介しながら、'78年に仲間たちと共同でプロデュースするライブハウス〈ファクトリー・クラブ〉を開く。クラブに出演するメンバーの曲を集めたレコードの発売をきっかけに、翌年には〈ファクトリー・レコード〉も設立。クラブはその後発展的に解消し、〈ハシエンダ〉へと生まれ変わる。ウィルソンはテレビ局勤めを続けながら、クラブとレコード会社の経営トップとして奔走。こうして彼と仲間たちによる〈ファクトリー〉を中心に、'80年代から'90年代前半までのマンチェスター音楽シーンが形成されていく。

 お正月映画として『めぐり逢う大地』が公開される、マイケル・ウィンターボトム監督の最新作。監督自身が80年代からの始まるマンチェスターの音楽ムーブメントに夢中だったらしい。今回はわずか10数年前で関係者がほとんど生存中という難しい条件にもかかわらず、かなり自由に映画を作っていることがありありとわかる作品になっている。これはモデルとなった人物の側から生まれた企画ではなく、その中心から外れたひとりのファンの視点からモデルにアプローチしていった結果だと思う。もちろん映画には現実の美化もあるだろうし、映画に描けないようなエピソードについては伏せてもいるだろう。だがこの映画の中では、主人公のトニー・ウィルソンも彼の仲間もバンドメンバーたちも、かなり批判的な目で見られている。批判的というのは非難の眼差しという意味ではない。あくまでも映画の視点は公平でクールなのだ。

 主人公は〈ファクトリー〉の代表だったトニー・ウィルソンだが、彼は映画全体を仕切る狂言回しであり、状況を観客に的確に解説するコメンテーター。映画の本当の主役は、'70年代末から'90年代前半にかけて、雨後の竹の子のごとく次々登場してくるバンドであり、巨大なエネルギーを発しながらうねる音楽シーンの動きだ。僕はロックに特に興味はないし、この映画に登場するような音楽を聴くこともない。それでもまぁ次々に出てくる出てくる、天才、鬼才、異能のキャラクターたち。これらがすべてフィクションではなく、全部が実在するというのがちょっとスゴイ。

 映画の中でトニーは自分たちの会社を巨大なメリーゴーランドに例えているが、マンチェスターの音楽シーンというのは千里を走る野生馬のようなものだったのかもしれない。トニーはそれを手なずけようとする。だが野生馬には野生馬の魅力があり、トニーはその魅力を失いたくない。だがそもそも人に馴染まないから野生馬ではないのか? それでもトニーは一時見事に野生馬を乗りこなしているようにも見えた。それが〈ファクトリー〉だったのだろう。だがやがて馬は再び走り出し、トニーは無様に落馬してしまうのだ。

(原題:24 HOUR PARTY PEOPLE)

2003年早春公開予定 シネセゾン渋谷
配給・宣伝:ギャガKシネマ
(2002年|1時間55分|イギリス)
ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/

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DVD:24アワー・パーティ・ピープル
原作:24アワー・パーティ・ピープル
原作洋書:24 hour party people (Tony Wilson)
サントラCD:24アワー・パーティ・ピープル
サントラCD:24 Hour Party People (輸入盤)
関連DVD:マイケル・ウィンターボトム監督

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