テープ

2002/12/11 アミューズピクチャーズ試写室
イーサン・ホークとユマ・サーマンが夫婦共演している低予算映画。
カメラが出しゃばりすぎで、芝居が途切れてしまう。by K. Hattori

 トライベッカの小さな劇場で上演されていた芝居に目を付けたイーサン・ホークが、『恋人までの距離〈ディスタンス〉』『ウェイキング・ライフ』のリチャード・リンクレイター監督に映画化を持ちかけて実現した密室のサスペンス。と言っても別に、誰かが殺されるとか、何か特殊な大事件が起きるというわけではない。物語の舞台になるのはミシガン州のランシングにあるモーテルの一室。登場人物はわずかに3人。この部屋の中で、10年前のある出来事について3人がそれぞれの告白をする。ただそれだけの話だ。

 若いインディーズの映画監督ジョン・ソルターは、映画祭での新作上映を明日に控えて、高校時代からの友人ヴィンセントと数年ぶりに再会する。互いの近況報告と昔話。そこで出てきたのが、高校時代にヴィンセントの恋人だったエイミーが、彼と別れた後でジョンと短期間付き合っていたという話。ヴィンセントはエイミーとジョンの関係をしつこく問いつめる。ジョンはそのしつこさに負けて、自分がエイミーと強引に関係を持ったことを告白する。「それはレイプしたってことか?」と食い下がるヴィンセント。「断じてレイプじゃない」と言うジョンだが、その口調は歯切れが悪い。ヴィンセントはさらにジョンを問いつめ、とうとう彼がエイミーを乱暴したと証言させることに成功。しかも彼はこの一部始終を、小型のテープレコーダーに録音していた……。

 ヴィンセントを演じるのはイーサン・ホーク。旧友ジョンを演じるのはロバート・ショーン・レナード。エイミー役で物語の中盤から登場するのが、私生活ではホーク夫人でもあるユマ・サーマン。登場人物はこの3人のみ。キャメラはモーテルの小さな部屋から一歩も外に出ない。上映時間は1時間27分だが、物語もほぼ同じ時間を省略なしで描いている。つまり映画の観客は登場人物たちが経験するのと同じ時間を、リアルタイムで同時体験するのだ。

 タイトルは『テープ』になっているが、このテープは登場人物を舞台に釘付けにしておく小道具に過ぎない。中心になっているのはテープにも録音された、10年前の出来事だ。ヴィンセントはなぜそれにこだわるのか? 僕には結局、それが最後の最後までわからなかった。ジョンヘの嫉妬や復讐? ならばなぜ10年間も放っておいたのか。エイミーとよりを戻したい? そんな馬鹿な。

 会話の進行によって3人の力関係のバランスがどんどん変化していく様子が、おそらく原作戯曲の面白さなのだろう。映画の中盤で完全に全体を掌握していたヴィンセントが、あっという間に蚊帳の外に放り出されるくだりなどは面白い。しかしこうした芝居の妙味が、ぐるぐると動き回るキャメラや、細かく切り刻まれたカット割りによって分断され、薄められているとも思う。もっとじっくり、腰を据えて撮ってもいい話だと思うのだけれど……。

(原題:TAPE)

2003年陽春公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:メディア・スーツ
(2001年|1時間27分|アメリカ)
ホームページ:http://www.mediasuits.co.jp/

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DVD:テープ
原作洋書:TAPE (STEPHEN BELBER)
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